原油のひどい暴落で考えるべき「商品価格マイナス時代」の歩き方コモディティは株式とは異なり、その価値がゼロにはなることはないという常識は崩れてしまった(写真はイメージです) Photo:PIXTA

「ゼロにはならない」という常識が
覆されたコモディティ市場

 原油先物価格が急落し、ひどいマイナス価格を記録したことで、その動向は広く人々の関心を集めることになった。新型コロナ禍における経済活動停滞の象徴として、または生産油国間の協調体制に生じた綻びとして、その受け止められ方は立場によりさまざまだ。

 この短期間で、原油価格に関しては語り尽くされている状況で、取り上げるテーマとしてはやや食傷気味となることは承知しているが、本稿では市場では何が起きて、今後どうなっていくのかに重きを置いて整理していきたい。

 現物であれ先物であれ、コモディティ市場に新参者として足を踏み入れるにあたって、市場の先人達から教えらえることは多々ある。その1つが「コモディティは株式とは異なり、その価値がゼロになることはない」ということだ。

 オルタナティブ(代替)投資の運用先として、今世紀に入ってコモディティ投資人気が高まったのは、こうした「無価値にはならない」という「教え」や「前提」が背景にあっと思われる。しかし、足もとではそうした「常識」が崩れてしまった。

 もっとも、金利はゼロ以下にはならないという常識も早々と覆っているので、コモディティ価格がゼロどころかマイナスになることを否定するのも、馬鹿げた考えなのかも知れない。いずれにしても、コロナ禍がもたらした非常事態であることは確かだ。

 では、このマイナス価格が全く予見され得なかったかと言えば、おそらくそんなことはなかった。たとえば原油では、カナダオイルサンドの価格指標であるウェスタン・カナディアン・セレクト(WCS)は3月半ばにすでに1バレル当たり4ドル台まで下落しており、その後の混乱を想起させるものとも言えた。

 また、米国のガソリン卸売り価格が原油価格すら割り込んでしまったことは、原油との対比ではすでにマイナス価格をつけたとも言えるし、米国の石油消費市場が非常事態に突入していることを示唆するには十分な出来事だった。