「貧困ビジネス」施設が“終のすみか”に…アパートの老朽化から始まる転落人生写真はイメージです Photo:PIXTA

 新型コロナの影響で新たな貧困層の増える可能性がある。それがなにを引き起こすのか? 仮に生活保護制度を利用しても、行政が住まいの確保にまで動いてくれるケースはまれである。福祉事務所の中には、立ち退きに遭っている高齢者が窓口に相談に来た場合、民間の宿泊施設への入所を勧めるところが少なくない。その中には、「貧困ビジネス」と言われる劣悪な環境の施設も多く含まれている。ホームレス問題や「大人の貧困」の実態をルポした『閉ざされた扉をこじ開ける』(朝日新書)の著者、一般社団法人つくろい東京ファンド代表理事・稲葉剛氏が報告する。

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困難極める単身高齢者の部屋探し

 住まいの貧困は世代を越えて広がっている。2016年12月、私が運営するシェルター「つくろいハウス」(東京都中野区)に80歳の男性が入所した。佐久間さん(仮名)は月に十数万円の年金収入があるものの、2年前、住んでいたアパートが老朽化して取り壊しになり、立ち退きを余儀なくされた。すぐに次のアパートを探したものの、不動産店で自分の年齢を告げると、どこの店でも「それは難しいですね」と言われ、退去までに次の部屋を確保することができなかった。仕方なく、荷物を処分して、カプセルホテルに移り、部屋探しを続けたものの、いつまで経っても見つからない。そこで、ホームレス支援団体に相談し、私たちのシェルターに入居することになったのである。