きれいな英語表現を覚えても、ビジネスで失敗する理由Photo: irstone / 123RF

前回、「日本人は空気を読むのが得意というけれど、私たちが得意とするのは、あくまで日本ローカルの空気。そのままグローバルに出ても、無意識に地雷を踏むことがある」と紹介した。では、どのような点に注意すればよいのだろう。
米国の大学やハーバード・ビジネス・スクールで学び、総合商社で丁々発止のビジネスを行ってきた経験を踏まえて、現在、日本人の英語力向上とグローバル・リーダーの育成に携わる著者が、最新作『グローバル・モード』から抜粋してそのコツを紹介する。

言い回しや表現を変えただけでは通用しない

 グローバル・モードへのシフトは、単に言い回しの問題ではありません。「失礼にならない表現リスト」を暗記しても、その土台となるグローバル・モードとは何かを理解していなければ、同じ失敗を繰り返すことになるでしょう。根源となる「(1)思想」の部分から、思想の発露である「(2)伝達方法」、それらを踏まえた「(3)ビジネスの進め方」、3つの層のすべてにおいて、ローカルからグローバルへモードを切り替えていく――それは英語の学習よりよほど大切なのです。

(1)思想

 先述のとおり、グローバル社会における最も大切な考え方として、「人と人は違う。そして違うことは良いことだ」というものがあります。その思想があれば、相手の意見の優劣を問うのではなく、「あなたの意見もありますね」「そして私はまた違う意見を持っています」という言い方を探っていくはずです。

 当然、気配りのポイントも変わります。日本では一人ひとりが違うことに想像が働かず、ステレオタイプで物事を見てしまいやすい傾向があるからです。例えば、褒めているつもりで「インドから来られたのですね。数学がさぞかし得意でしょう」と言ってしまう。インド人も一人ひとり違うわけで、人をグループ単位で扱ってしまうことそのものが、個性を無視した発言だと言えます。

 いくらきれいな英語表現だけ覚えても、肝心の思想が欠けていたら話になりません。はっきりと意識的に、思想自体をグローバル・モードにシフトしていかなければならないのです。