天才数学者たちの知性の煌めき、絵画や音楽などの背景にある芸術性、AIやビッグデータを支える有用性…。とても美しくて、あまりにも深遠で、ものすごく役に立つ学問である数学の魅力を、身近な話題を導入に、語りかけるような文章、丁寧な説明で解き明かす数学エッセイ『とてつもない数学』が6月4日に発刊される。

教育系YouTuberヨビノリたくみ氏から「色々な角度から『数学の美しさ』を実感できる一冊!!」と絶賛されたその内容の一部を紹介します。

1兆という「量」を想像できますか? Photo: Adobe Stock

1日あたりに離婚する人数の求め方

 厚生労働省の「人口動態統計の年間推計」によると、平成30年(2018年)の離婚件数は20万7000組と推計されるそうだ。さてこの数字、あなたはどのように感じるだろうか? 「まあ、こんなものかな」「やっぱり多いな~」「思ったより少ないな~」などいろいろな感想があることだろう。

 では、同窓会で久しぶりにあった高校の友人に「実は俺、バツ3(離婚を3回経験)なんだよね」と聞かされた場合はどうだろう? おそらくこちらの場合の「3」という数字については、自分や他の友人や親戚と比べても、生涯未婚率の高まりが社会問題になっていることを考えても、たいてい「多い」という評価になるのではないか。

「3」については評価がほぼ定まるのに対し、「20万7000」に対してはいろいろな反応があるのは、「20万7000」の大きさを実感するのが難しいからだと私は思う。

 こうしたとき、よく使われるのが「1日あたり~」という言い回しである。20万7000(組)を365(日)で割ってみると、2018年は1日あたり約567組が離婚したことになる。

 これを24(時間)で割れば1時間あたり約24組、さらに60(分)で割れば、1分あたり約0・4組が離婚したこともわかる。日本全国ではおよそ2分半に1組が離婚しているわけだ。「20万7000組」ではボンヤリとした印象だったとしても、「2分半に1組」と聞けば、今度はその数の規模が現実的にイメージできる人は多いと思う。