コロナショックを受けた日本企業の3月決算。6割以上の企業が今期予想未開示という異常事態だ。だが、株式市場は底値から半値戻しを達成。暴落からの戻り局面は投資で儲けるチャンスである。「週刊ダイヤモンド」6月6日号では最新決算を分析し、コロナウイルスに負けない「強い株」を選抜した。

6割が今期業績予想を未開示の大波乱!
発表したトヨタの営業利益予想は8割減の悲惨

 コロナ禍が日本企業の業績に大打撃を与えている。2020年3月期の本決算発表シーズンを迎えたが、そもそも発表を延期したり、見通しを示せなかったりする企業も6割に達するなど、異例づくしの“恐慌決算”の様相を呈しているのだ。

 「今期の営業利益は前期比8割減」――。ニッポン株式会社の苦境ぶりを象徴する決算を5月12日に発表したのが自動車最大手のトヨタ自動車だ。黒字は保つ見通しとしたことや、予想の開示に至った点を評価する向きもあるが、そもそも国内市場縮小や自動運転など「100年に一度」と言われる大激変のさなかで、突如訪れたコロナ禍の逆風が、かつてない試練を与えているのだ。

 自動車セクターを担当する三菱UFJモルガン・スタンレー証券の杉本浩一シニアアナリストは、これから大消費国のインドなど新興国経済が厳しい先行きである点も踏まえ、「新車販売が世界的に19年のレベルに戻るには10年かかる」と語るほど、非常に厳しい見方を示している。自動車という産業一つを取っても、コロナはそれほどの衝撃を与える災禍として世界に降り注いでいる。

 それ故、決算発表に臨んだ経営者たちからは、「リーマンショックよりもインパクトははるかに大きい」(トヨタの豊田章男社長)、「戦後最大の人類の危機」(ファーストリテイリングの柳井正会長兼社長)など、事態の深刻さを意識せざるを得ない発言が相次いだ。

 2・3月期決算の東証1部企業について、現時点では19年度の通期実績で純利益が15・1%減、20年度の会社予想で18・9%減と、2期連続で二桁以上の大幅最終減益に落ち込む。

 5月下旬時点のJPモルガンの試算によれば、TOPIXのEPS(1株当たり利益)は今期(21年3月期)に60円と、直近ピークの18年(122円)と比べ半減する見通しとなっている。

クラウドサービスや5G関連
リモートワーク普及で恩恵を受ける村田やイビデン

 ところが、株式市場は悲観一色ではない。3月に歴史的な急落を経た後は、常に二番底への警戒感がくすぶりながらも、相場水準を切り上げる展開となっている。FRB(米連邦準備制度理事会)をはじめとする主要中央銀行が、異例の大規模金融緩和を打ち出し、大量の流動性供給に踏み切ったことが株高を後押ししている。

 だが、それだけではない。仕事、教育、医療などで遠隔での作業やサービスが余儀なくされたことで、クラウドサービスや次世代通信規格「5G」などが想定以上のスピ-ドで整備されるのは必至だ。その恩恵を受ける企業が注目を集めている。

 5G関連機器に不可決な積層セラミックコンデンサで高いシェアを持つ村田製作所や、5G向け半導体パッケージ基板が好調なイビデンなどである。イビデンはこの逆風下に、20年3月期の営業利益が94%増益を達成、21年3月期も37%の増益を見込む。

 危機は常に、変革の好機でもある。株式市場では、勝ち馬に乗った銘柄が成長を続け、将来的に大化けする可能性もある。そんな「強い株」をどのように発掘すればよいのか。「週刊ダイヤモンド」6月6日号では、注目10大セクターについて、トップアナリストの見解を参考に、直近の決算分析から、持続的成長が見込める銘柄まで徹底解説したので、参考にしてほしい。

中長期的に2、3倍を狙える安定成長株
個人にも人気があるMonotaROは10年で株価67倍

 株式投資では、業績変動の激しい企業に一喜一憂するのもいいが、毎期、業績を着実に伸ばして、中長期で2倍、3倍の株価が狙える銘柄を長期保有するのも醍醐味だ。そんな銘柄を選ぶ際に注目したいのが、過去の業績推移である。なぜならば、中長期で安定的に成長している企業であれば、経営力が高く、他社が簡単に真似できないビジネスを展開している確率が高いからだ。

 「直近10年間の増収と増益回数が各7回以上」「直近5年の売上高伸び率が年率4%以上」と「直近5年の営業利益伸び率が年率7%以上」など7つの条件で、精鋭候補を選んだ。1位はレーザーテック。EUV(極端紫外線)を使うマスク欠陥検査装置が好調で、株価も上場来高値を更新している。予想PER(株価収益率)が75倍と高いが、6月期決算のため7月末ごろに発表される来期予想次第でPERは大きく切り下がる。

 4位の MonotaRO は、事業者向け工業用資材の通信販売「モノタロウ」と一般消費者向け通販を展開し、直近10年で売上高は9倍、営業利益は14倍に達している。この間、株価は67倍に上昇。現在も、4月の売上高は前年同月期で20%増を記録。特に、一般消費者向け通販が好調だ。

 これらの企業は多少PERが高くても、高水準の成長を継続すれば、株価はいずれ高値を更新する。医療関係者向けの情報を提供するエムスリーは、常に50倍以上のPERをつけながら、10年間で株価は10倍以上になった。今年4月にも新型コロナ危機の中、上場来高値を更新している。

 このほかにも、「週刊ダイヤモンド」6月6日号では、最新決算の分析をもとに、株価の下落リスクが小さい「高配当株」、高成長で割安な「中小型株」、時価総額の高い主要銘柄の株価診断などを掲載。様々な角度から、魅力的な株を紹介しているので、投資の参考にしてほしい。