銀行貸し渋り不況になると銀行の貸し渋りが問題視されるが、銀行は意地悪をしているわけではない Photo:PIXTA

金融危機が発生すると銀行が貸し渋りをする場合があるが、銀行が意地悪をしているわけではなく、自己資本比率規制によりやむを得ず貸し渋りをするのである。(塚崎公義)

 新型コロナの影響で、世界的に経済活動が深刻な打撃を受けている。それが金融危機に発展する可能性も、リスクシナリオとして考えておくべきかもしれないと思い、数回のシリーズを組むことにした。メインシナリオではないので、過度な懸念は不要だが、頭の片隅には入れておいていただきたい。

 今回はそのシリーズの第3回であり、考え得る金融危機の全体像については第1回「リスクシナリオとして金融危機を考えるべき理由」をご参照いただければ幸いである。

銀行には自己資本比率規制あり

 主要国の主な銀行には、自己資本比率規制が課されている。大胆に言えば「銀行は自己資本の12.5倍までしか融資をしてはならない」というものである。

 これは別名「BIS規制」と呼ばれる国際的な条約であるが、主要行以外の銀行にも、各国の国内法で類似の規制が課されている場合が多い。

 これは銀行の倒産を防ぎ、金融危機を防ぐための規制である。銀行の融資の12.5分の1(=8%)が回収不能になっても、銀行が債務超過に陥らないようにするという趣旨である。

 しかし、金融危機の初期段階においては、この規制がむしろ危機を増幅してしまう場合がある。

 銀行の不良債権が増加し、回収不能額の増加によって赤字になると、銀行の自己資本が減少する。そうなると、銀行の融資額が減った自己資本の12.5倍を超えてはいけないので、融資残高が自己資本の12.5倍に近かった銀行は、既存の融資を回収する必要に迫られるのである。

 あくまでもリスクシナリオではあるが、新型コロナ不況により企業が大量に倒産して銀行の貸し倒れが増えると、銀行の自己資本が大幅に減少し、多くの銀行が貸し渋りをせざるを得なくなるかもしれない。