コンピューターPhoto:MirageC/gettyimages

――WSJの人気コラム「ハード・オン・ザ・ストリート」

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 半導体はハイテク業界の神髄であり、米国の科学発明の象徴だ。それでありながら、半導体メーカーは米中競争の渦の中に巻き込まれた。米中はどちらも、この未来の業界を支配することを望み、相手を排除しようとしている。

 皮肉なことに、そうした分断への衝動こそ、両国の野心にとって最大の脅威になるかもしれない。

 中国にとっては、華為技術(ファーウェイ)が陥った状況が自国のぜい弱性を浮き彫りにする中、国内の半導体業界を育てるという長期目標は緊急性を帯びている。ボストン・コンサルティング・グループによると、中国工場が外国企業向けに生産する分を除けば、世界の半導体需要の4分の1近くは中国企業が占める。だが中国国内の半導体業界の比率は、そのうちわずか14%にすぎない。

 つまり、米国は技術的な優位性をテコに、半導体を巡る中国の野望を打ち砕くことができるのだ。例えば商務省は先ごろ、新たな規制を導入し、米国で設計された製造装置を用いて生産した半導体をファーウェイに出荷するには、台湾積体電路製造(TSMC)など他国の半導体メーカーであっても輸出許可を申請することを義務付けるとした。

 半導体製造の重心はアジアにシフトしている。TSMCと韓国のサムスン電子は高度技術を有する2大メーカーだ。ただ、アプライド・マテリアルズやKLA、ラムリサーチといった米企業は今もなお、上流側で半導体生産に欠かせない装置の製造を完全に支配している。シティのローランド・シュー氏は「半導体生産で米国製装置の利用を完全に止めることは誰にもできない」と指摘する。調査会社コーウェンのクリシュ・サンカー氏は、中国の半導体メーカーは当面、少なくとも数社の米製造装置サプライヤーに頼らざるを得ないと予想する。