「もっと強い意識を持っていこう」と言ったのに、いつまで経っても変わってくれない。「チームのことを考えて行動すれば評価は上がる」と伝えたのに、自分の仕事しかしない。部下にアドバイスをしたのに、「思ったのと違う伝わり方になってしまった」「何度言っても変わらない」「伝えたかったことと違う動きをされて困った」といった経験はありませんか。「伝えたつもりが伝わっていなかった」というコミュニケーションの問題は日々起きています。

部下にどのような言葉を使って伝えれば、部下はわかってくれるのか、適切な行動をとってくれるのか――きちんと納得感のある言葉を伝えるリーダーもいれば、曖昧な言葉で伝えるリーダーもいて、「言葉」の重要性が高まっていると感じた方も多いでしょう。心を動かす「言葉がけ」のできるリーダーに部下はついてくるのです。

自分の意識を変えるのでさえ難しいのですから、部下の意識を変えさせるのはもっと難しいもの。そこで、新刊どう伝えればわかってもらえるのか? 部下に届く 言葉がけの正解から、シーン別にNG行動・発言とOK行動・発言を対比させながらどのような言動で接したらいいかを紹介していきます。

【改善点を伝える前に】「否定に弱い部下」がすんなり聞いてくれるワンフレーズとは?Illust: Adobe Stock

×いきなり「問題点」を伝える
○褒めてから「改善点」を伝える

リーダーの悩み:改善点を伝えても「わかっています」と言われてしまい、聞き入れてくれない

「褒められて育つタイプです」「長所を伸ばしてほしい」と自分で言う部下がいます。確かに短所に目をつぶり長所を伸ばすという方法を推奨している人もいます。

 けれども長所だけ伸ばす方法では、部下もこのままで大丈夫だろうと「現状満足」「現状維持」になってしまい、部下のためになりません。

 せっかくの長所を活かし、部下に成長してもらうためにも、短所をケアしていく必要があります。

…>防御している部下への改善方法

 全国に店舗を展開しているスーパーで商品開発部に所属する部下Cさんは、「自分は仕事ができる」と自信満々でした。基本業務には特に自信を持っていて、短時間でこなすことができます。

 いわゆるマニュアル世代ともいえます。マニュアル世代とは、マニュアル通りに事が運んでいるうちはよいが、不測の事態が起きると臨機応変の対処ができない世代です。

 先日Cさんは競合他社の情報を分析し、会議で発表しましたが、もっと掘り下げた分析が必要でした。

 自信を持っているのはいいことですが、リーダーからするともっとよくなるのにと思っています。分析の仕方や調査の方法など、もっと学んでほしいところです。

 Cさんは、ものすごく自信を持っている半面、否定に弱いという特徴があります。ゆえに、改善点を言われないように防御しています。

 このような部下が改善するにはどうしたらいいのでしょうか。

 この場合、最初にいきなり改善点を伝えると、「わかっています」などと言って防御してくる可能性があります。

 まずは「警戒心を解くこと」が必要です。最初は「褒めて」、そのうえで改善点を伝えるようにします。

 部下が「指摘を受け入れられる態勢をつくってあげる」のです。褒めたうえで弱みの改善のアドバイスをするようにしましょう。

 なお、弱みを改善したいときは、「○○ができていない」(×)ではなく、「○○ができればもっとよくなるよ」(○)と未来に向けた言い方にするといいでしょう。

 このケースで言うなら、「Cさん、先日の会議の発表だけど、グラフはわかりやすかったよ(褒める)。○○ができればもっとよくなるよ」とアドバイスするのです。

 部下が成長するには、リーダーは指摘しなくてはなりません。そのときは嫌がられるかもしれませんが、将来的には感謝されるときが来ます。

 リーダーのあなたにも、かつての上司のあの言葉が今の自分をつくったなんてことがあるのではないでしょうか。

 部下から、後に感謝されるようなリーダーを目指しましょう。

 Cさんはその後、調査の方法を学び、非常に鋭い見解を盛り込んだ報告書を作成できるようになりました。評価も高まり、「あのとき、改善点を指摘してもらえてよかった」と今ではリーダーに感謝しているそうです。

 また、自分に足りないところを磨こうとセミナーに積極的に参加し、常に自分を高めることを意識するようになりました。

 このように、否定に弱い部下には、いきなり改善点を伝えると落ち込んでしまうので、最初に褒めることで受け入れ態勢をつくるのです。なお、冒頭に褒める育成には疑義を唱えましたが、あくまでも褒めるだけがよくないということなので、ご注意ください。

【ポイント】

「問題点」を伝えると身がまえる部下には、褒めて防御を解き、そのあとに「改善点」を伝える