企業の競争優位を確立するためには、ITを戦略的に企業に導入し、意思決定や戦略遂行活動の質やスピード、正確性、効率性を高めることが不可欠になっている。ITの戦略的活用においては、CIOの役割が重要になる。

企業経営における
IT利用

 企業が近年の市場の成熟化や競争のグローバル化に対応し、勝ち残っていくためには、イノベーションとスピード、品質、新たな価値創出を重視し、企業独自の競争優位を確立する必要がある。その鍵となるのがIT(情報技術:Information Tech-nology)だ。経営的な判断の下、ITを戦略的に企業に導入し、競争優位の源泉となる差別化やコスト優位をいかに生み出すかが企業の命運を分ける。そのため企業は主に、(1)ITを戦略立案や知識・ノウハウの共有に活用することと、(2)企業が行っている価値創造活動を情報システムで置換したり、支援したり、組み替えることを検討しなくてはならない。

 (1)の利用は、いわば企業の「考える・判断する」活動の質やスピード、正確性を高めることを目的としている。代表的なものに、市場情報や日常の取引情報を経営戦略などに活用するための経営情報システム(MIS: Management Information Sys-tem)、意思決定支援システム(DSS: Decision Support System)、企業の独自技術・知識を管理・活用するためのインフラとなるナレッジ・マネジメント・システム(KMS: Knowledge Management System)などがある。

 (2)の企業の価値創造活動に関わるITは、バリューチェーンの支援活動に関わるものと主活動に関わるものに大別される。支援活動を支える情報システムには、コミュニケーションや情報共有、ナレッジ・マネジメントのインフラとなるグループウエア、企業活動の主要な機能と情報を統合的に管理するERP(Enterprise Re-source Planning)などがある。これらはバリューチェーン全体を効率化するとともに、戦略立案・実行のインフラとして機能する。