我々の日常に潜む「小さなファシズム」、大学の体験授業に学ぶ写真はイメージです Photo:123RF

「白いシャツと紺のジーンズ」で
「リア充爆発しろっ!」

 数年前のこと、ツイッターで奇妙な動画を見た。揃って白いシャツにジーンズを身につけた大勢の若者たちが、「リア充爆発しろっ!」と大声で叫んでいる動画だ。声を揃え息を合わせ、大声で唱和している。「なんだこりゃ?」。

 どれどれと検索してみると、ある大学で行われている「ファシズムの体験学習」だという。どうやらその動画は、周りで見物していた学生が撮ったものらしいが…。

『ファシズムの教室 なぜ集団は暴走するのか』書影『ファシズムの教室 なぜ集団は暴走するのか』 田野大輔著 大月書店刊 1600円+税

 甲南大学文学部の田野大輔教授のファシズム体験学習である。

 田野教授が「田野総統」、学生たちは「田野帝国の国民」となって行なわれるロールプレイングを通して、人々がファシズムを受け入れるときどのような感情の動きがあるのかを体験させ、いわば「ファシズムに対するワクチン」となるような気づきを得ることを目的としている。

 体験学習は2回にわたって行う。大教室に集まった250人で行う大規模ロールプレイだ。1回目。「独裁」を体験するのだからなんといってもまず「独裁者」を決めなくてはならない。そこで田野教授が「独裁者役」を務めることを、全員の拍手を持って承認させる。そして、独裁者への敬意を敬礼で示すことを要求し、ナチス宜しく片手を斜めに伸ばして「ハイルタノ!」と大声で唱和させる。