保険会社vs金融庁#7写真:JIJI、毎日新聞社

金融庁の元長官などOBたちが生命保険業界で暗躍している。特集『保険会社vs金融庁』(全8回)の#7 では、かつての部下に電話一本で話を通すその強烈な「神通力」と、天下りの実像に迫った。(ダイヤモンド編集部 中村正毅)

「週刊ダイヤモンド」2020年7月4日号の第1特集を基に再編集。肩書や数値など情報は雑誌掲載時のもの。

生命保険業界で獅子奮迅の働き
金融庁OBの「神通力」

 ホテルなどの宿泊施設や自宅での療養についても、給付金をお支払いします――。新型コロナウイルスの感染拡大による医療崩壊が危惧された4月、生命保険各社がそうした柔軟な支払い対応できっちりと足並みをそろえる中で、実際の手続きの現場では一つの懸念が持ち上がっていた。

 医療機関に記入してもらう自宅療養などの証明書の様式が、各社ともバラバラかつ押印が必要など、「顧客本位」とはお世辞にも言えないものだったからだ。

 業界団体が押印不要となる統一の証明書様式を作成し、各社に配布したのは、5月に入ってからのことだった。

 実は、この取り組みを推進したのは神奈川県だ。同県で医療危機対策統括官を務める畑中洋亮氏らが中心となり、保険金請求手続きの負担を少しでも軽くしようと動く中、意義のある取り組みとして金融庁の強力な後押しを受け、全国での実施に至ったわけだ。

 もともと、畑中洋亮氏は財団法人あなたの医療の代表理事を務め、昨年6月には神奈川県と連携し、生命保険の照会・請求代行に関する実証事業を始めている。

 実証事業の協定式には、神奈川県知事のほか、遠藤俊英金融庁長官、元長官の畑中龍太郎氏も列席。龍太郎氏はあなたの医療の評議員のメンバーで、洋亮氏の実父だ。

Ryutaro HatanakaPhoto:JIJI