企業誘致は、大型立地を期待するよりも、地域の中核企業の事業戦略を中心に据えて、関連企業の進出や再投資による産業の集積と高度化を図る政策が重要になってきている。その一方で、設備投資を計画する企業が何を求めているのか、自治体は企業の投資戦略を理解し、地域の優位性を打ち出して、企業ニーズにきめ細かく対応していくことが必要になる。
(日本立地センター専務理事 德増秀博)

 

 企業の国内設備投資は、より戦略化の傾向を見せ始めている。拠点再編を通じて競争力の向上を目指した投資や、地域企業のものづくり技術を生かして、新たな成長産業への参入や受注増を目的とした投資だ。量産機能はもとより市場が海外にシフトする中、企業は国内拠点に何を求めて投資をするのか。自治体には、企業戦略に直結する誘致政策が求められる。

企業の国内投資意欲は
潜在化するも旺盛

 経済産業省の「工場立地動向調査結果(速報)」によると、2011年(1月~12月期)の工場立地件数は869件(前年比10.6%増)で、過去最低の前年を上回ったが、依然として低い水準にある。海外経済の減速や円高などによる企業の国内設備投資計画の凍結・見直し、海外投資の拡大、東日本大震災の影響などが要因と考えられる。

 とはいえ、企業の国内投資意欲がなえたわけではない。国の「国内立地推進事業費補助金」には、多くの企業が注目し申請も高水準だ。

 同補助金は、震災を機に産業の空洞化が加速する恐れがあることを踏まえ、生産拠点・研究開発拠点に対して助成するもの。今年2月の一次公募に続き、7月の二次公募では、申請件数480件(うち中小企業29件)、採択件数265件(うち中小企業164件)で、補助金総額は約978億円となった。

 この申請状況からわかるように、企業は今、事業基盤の強化を図っており、今後、投資環境が整えば新たな立地につながると考えられる。国では、同補助金が採択企業の設備投資(補助額の約6倍に当たる約5879億円)の呼び水となり、裾野産業に対し毎年約1兆8000億円の需要創出と、約7万人の雇用創出を期待している。

次世代中核産業として
期待の大きい航空機産業
半導体や物流も活発

 航空機産業は近年、新規参入や受注拡大を図るため各地でコンソーシアムが組まれ、地元自治体も支援するなどして活動が進められている。

 機体部品の約35%を日本企業が手がけた米ボーイング社の「B787」や三菱リージョナルジェットの量産化に伴い、東海地域をはじめとする各地で企業の投資や生産能力増強が図られている。

 この他にも、半導体関連産業は、環境・エネルギー分野への投資拡大を併せ持つ「集中と選択」をした立地へと移行し、エコ関連デバイスを中心とした設備投資を行っている。
また、関東、東北地域では震災後、物流機能再編の動きが活発化している。