ゼネコンwithコロナ#5Photo:Tomohiro Ohsumi/gettyimages

五輪に合わせた再開発案件が終わって競争が激化するタイミングでのコロナ危機。感染拡大を受けてゼネコンの受注活動は一時ストップしたが、ここからの競争はより激しいものとなる。大手が準大手や中堅ゼネコンのシマでも受注獲得を狙ってくるのだ。特集『バブル崩壊 ゼネコンwithコロナ』(全7回)の#5では、準大手や中堅ゼネコンの生き残り戦略を探った。(ダイヤモンド編集部 松野友美)

「週刊ダイヤモンド」2020年7月11日号の第1特集を基に再編集。肩書や数値など情報は雑誌掲載時のもの。

コロナ&ポスト五輪で「平場の戦い」
大手が中堅のシマを荒らす

「やっと営業担当者が客先へ通えるようになってきた。これまでは、先方もこちらもリモートだったので、連絡が取りづらかった。ウェブ会議では、進んでいた話を詰めることはできても、新規の話はなかなかできなかった」(中堅ゼネコンの経営企画担当者)

 新型コロナウイルス感染拡大の影響は、ゼネコンの受注活動にも及んだ。

 準大手や中堅ゼネコンの複数の関係者によると、4月7日の緊急事態宣言の発令に伴い、3月以降に進むはずだった商談が5月下旬までお預けになったりした。その結果、発注者による入札参加の要請、見積もり、工事の入札実施などのスケジュールは軒並み延期された。

「今夏が営業活動の大詰めの時期となり、秋以降から入札が始まって、受注競争が表面化するようになる」というのが大筋の見立てだ。

 しかし、受注を狙うプロジェクトの計画そのものがどうなるかという、根本的なところで不透明感が出ている。

 新型コロナウイルス感染拡大を受けて、多くのゼネコンがゴールデンウイーク(GW)前後に工事を中断した。これが経営に与える影響自体は甚大なものではない。コロナ危機の恐怖は、「発注者サイドが今後の投資をどうするか悩んでいる」ということだ。

 昨秋にサッカーチームのFC今治がJ3リーグに昇格したのを機に建設計画が決まった今治スタジアム(愛媛県今治市)は、着工の予定を今年10月から来年1月に延期した。

 プロジェクトの延期といった計画変更が全国でじわじわと増えている。

 ある中堅ゼネコンの幹部は「東京の製造業のお客さんが、周年事業として20億円弱で本社の建て替えを予定しており、工事業者選定の内定まで取れていたが、『取りあえず様子見で』と言われた」と明かす。

 すでに進行しているプロジェクトが凍結されるようなケースはまだまれだが、計画が具体化する前の段階にあるものについては、発注者が見直しに乗り出している。

 コロナ危機前からその傾向があったホテル建設計画などは、最たるものだ。