経営のゲームチェンジと「チーム経営2.0」の時代<br />
アビームコンサルティング 執行役員 プリンシパル 狗巻勝博 Masahiro Inumaki

社会へ破壊的なインパクトをもたらす
新しいチーム経営

  リーマンショックから10年が経過し、日本企業の「稼ぐ力」は改善してきています。一方で、進展するデジタル革命によって経営環境は大きな変革期を迎えており、過去に取り組んできた戦略転換や構造改革を進めるだけでは乗り切ることが難しくなる、と考えています。

 「稼ぐ力」とは、「創出価値の大きさ」×「存在価値の長さ」の乗算で表される面積を最大化することだと考えています。しかし、デジタル革命の影響により、一度獲得した競争優位を維持できないなど、激しい環境変化がこの面積を広げることを難しくしています。

 そこで日本企業に求められるのが「経営そのもののゲームチェンジ」であり、いくつか重要なアクション(ポイント)があります。

 第1が「未来定義」です。10~15年後、自分たちはどういう存在として顧客価値を創造し、社会に貢献していくのか。多様な視点からこれを描き上げる。そこから自分たちがいまなすべきアクションを考えることが必要でしょう。

 第2に「0~1000のプロセスをマネジメントする」。新規事業開発やイノベーションの創出において、経営は既存事業との関係も考慮しながら舵取りを行わなければなりません。ここでは、新しい外部からの経営資源と既存のそれとを再構成していく、高次のマネジメントが求められます。

 第3は「決断力と実行力のアップデート」です。既存事業の中で未来定義に合わないものはやめて、そこで生まれた余剰資源を次の新たな競争優位を獲得するための源泉に仕立てていく。このサイクルをダイナミックに回していくことが必要です。

 最後に大切なのが「共感」です。未来定義をストーリーとして各ステークホルダーに伝え、共感を得る。これは、一連の大きなサイクルを回していくうえでとても重要なポイントです。

 そして、この「経営のゲームチェンジ」を実現する一つの方法として、「新しいチーム経営」を提案しています。未来定義に基づき、必要な機能を獲得するために社内外から専門家を集め、新たな価値を創出する。各メンバーが機能横断的・主体的に役割を果たすだけではなく、リーダーは積極的に介入し、相互作用を促進させる。こうすることで、集団思考などの系統的エラーは回避され、効果的なシナジーを発揮できる、社会に対して破壊的なインパクトをもたらす新しい経営を実現することができると考えています。

 “Do innovation”ではなく“Be innovative”。我々は、日本企業における経営改革を、皆さまとともに実現したいと考えています。


●構成・まとめ|金田俢宏  ●撮影|阪巻正志