発達障害のひとつであるADHD(注意欠陥・多動症)の当事者である借金玉さん。早稲田大学卒業後、大手金融機関に勤務するものの仕事がまったくできずに退職。その後、“一発逆転”を狙って起業するも失敗して多額の借金を抱え、1ヵ月家から出られない「うつの底」に沈んだ経験をもっています。
近著『発達障害サバイバルガイド──「あたりまえ」がやれない僕らがどうにか生きていくコツ47』では、借金玉さんが幾多の失敗から手に入れた「食っていくための生活術」が紹介されています。
働かなくても生活することはできますが、生活せずに働くことはできません。仕事第一の人にとって見逃されがちですが、生活術は、仕事をするうえでのとても重要な「土台」なのです。
この連載では、本書から特別に抜粋し「在宅ワーク」「休息法」「お金の使い方」「食事」「うつとの向き合い方」まで「ラクになった!」「自分の悩みが解像度高く言語化された!」と話題のライフハックと、その背景にある思想に迫ります(イラスト:伊藤ハムスター)。連載一覧はこちら

「休んでも疲れが取れない」人がやっているNGな休日の過ごし方

家の外でできることひとつ、自宅でできること2つ

 日常の気がかりや不安から完全に離れて、完全に心を休める。そんな1日を、僕は「完全な休日」と呼んでいます。これを過ごすためには「何をするか(しないか)」の選別が非常に重要です。そうしないと、「休みは取ったけど、結局いつもより疲れた」という最悪の結果になりかねません。休むのが苦手な僕らですから、なおさら注意が必要です。

 ひと言でいえば、完全な休日に必要なのは、「良質な現実逃避」です。つまり、「自分は何もせず、ぼーっとしているだけで楽しめる」コンテンツを、できるだけたくさん用意しましょう。数は多ければ多いほどいいです。その日の気分や疲れ具合に対応できるよう、「家の外でできることひとつ」「自宅でできること2つ」は最低限必要です。

 人により好みは分かれると思いますが、参考に僕がやっていることを紹介します。

【家の外】
・サウナ
 最近はサウナブームですっかりメジャーな趣味になりましたが、短時間で気持ちを整え、爽快感を得る方法として間違いなく最も優れたもののひとつがサウナだと思います。サウナで汗を流し、水風呂でほてりを取るのを何度かくりかえし、休日であれば帰りにビールを1杯ひっかけるなんてのは最高の喜びですし、スポーツドリンク片手に散歩をするなんてのもたまりません。

・コーヒーのおいしい喫茶店
 「何もしないまま終わった休日」を「コーヒーを飲みに行くだけの最高の休日」に変えてくれる喫茶店はやはり素晴らしい。こだわりのある喫茶店も好きですが、コメダ珈琲店でのんびりするのも大変よい。喫茶室ルノアールのあの贅沢なおしぼりで顔を拭くのもいいですね。

・行きつけのマッサージ店
 マッサージは、もちろん少々お値段は張りますが、寝っ転がっているだけで確実に心地よい身体的刺激を与えてくれる非常に優れた娯楽です。身体がラクになるだけでなく、プロの施術に身を任せて過ごす時間は「何もしない」でいられます。終わった後の身体の軽さも素晴らしい。

・シーシャ(水煙草)バー
 僕は「じっとしている」というのが非常に苦手なのですが、このシーシャはその手(て)持無沙汰(もちぶさた)感をうまくやわらげ、穏やかな時間をつくり出してくれます。

 【自宅】
・映画・アニメ
 自宅のリビングには、映画やアニメを見るためのソファとモニタを常に用意してあります(これを仕事場と分けるのは本当に重要です!)。

・読むのが脳の負担にならない本
 30代半ばになって、「読みやすい本」の価値に気づきました。脳に負荷をかけず、とにかく楽しませてくれる、若くて粋がっていた頃ならバカにしてしまっていたような本。そういう作家を何人かみつけておくと、とても便利です。相性もあるので、ご自身で探してみてください(具体的に作家名を書くとどうやっても角が立つのでやめておきます)。

ヨガ、筋トレ、創作などはNG

 一方で、現実逃避に向いていないのが、ヨガ、筋トレ、創作、キャンプなどの「脳や身体を能動的に使う行動」です。これは、基本的に休息ではないと考えたほうがいいでしょう。もちろん、能動的かつ活動的な趣味でリフレッシュすることもときに必要ですが、それは休養とは別物ととらえなければいけません。

 小説の筆がまるで進まないまま焦燥感に焼かれて過ごした休日が、かつて新人賞に落選しまくっていた時期の僕にもありました。「有意義な休日」というとつい意識が高くなってしまいますが、ここはぐっと意識を下げて、完全な休日を実現してください。

 前段でしつこいほど述べた通り、休息というのは意志の賜物です。あなたの人生を善く生きるために、あなたはあなたを苦しめることをまずやめるべきなのです。