生き方に迷う「若者たち」を圧倒的に肯定し、徹底的に挑発する、仕事論の新しいバイブルが誕生した。国内最大のシードファンド(300億円)を運営する、36歳、若手NO.1ベンチャーキャピタリスト・佐俣アンリのデビュー著作『僕は君の「熱」に投資しよう――ベンチャーキャピタリストが挑発する7日間の特別講義』だ。
 この本を読んだことがきっかけとなり、新時代のSONY、次のメルカリ、そして、今は誰も想像すらできない「未来の会社」が生まれるかもしれない。
 対象は起業を目指す人だけではない。スポーツでもアートでも、趣味でも社会活動でも、もちろん目の前の仕事にでも、「熱」をもってチャレンジするすべての人に向け、その熱を100%ぶつけて生きてほしいという願いを込めて本書は書かれた。
 ノウハウ本でも成功本でもなく、ただ「熱」をもつ人の暴走本能を刺激する本だ。
「熱を抱えた投資家として、たくさんの熱を見て、応援して、大成功も大失敗も見てきた自分がいまわかることをすべて詰め込んだ」と著者が語る本書のなかから、この連載では特に熱い部分を紹介していきたい。第1回は「プロローグ」を全文掲載する。

僕は君に、資本主義の世界における<br />「究極の成功」について教えようPhoto: Adobe Stock

君はかならず、成功する

 僕のオフィスには、ひとつの机がある。

 ごつごつした無垢(むく)の木でできている巨大なやつで、うかつにこの上でコピー用紙に文字を書いたりしていると、ペンが紙を突き破って木の穴にブスッと刺さってしまう。そんな荒削りなところが気に入って使っているやつだ。

 ちょっと座ってくれ。

 ま、僕の前に座っているような気持ちで聞いてくれ。いいか。

 君はかならず、成功する。

 これから僕が君に話すのは、この資本主義の世界における「究極の成功」についてだ。この机で語られることを知る前と知った後では、世界のことがまるっきり違ったように見えてくるかもしれない。

 この机の前に座る登場人物はふたりいる。

 投資家と起業家だ。

 投資家の仕事は、世界の金を動かすこと。企業や金融機関、エンジェル投資家たちから出資を募り、それを才能ある起業家に投資するのが仕事だ。そして起業家は、この世界そのものを動かす。ITや医療など、世界の常識を大きく変えて進歩させる事業をつくるのが仕事だ。

 いいか、この資本主義の世界を今の姿にしているのは、いつもこのふたりの人間なんだ。投資家と起業家の対話を聞いていれば、この世界は誰が変えているのか、どのようにして変わるのか、そして成功とは何かが理解できるようになる。

 彼らの仕事について、僕はよく、車をつかったたとえ話をする。

 起業家は、新しい車をつくる。投資家はその車に入れるためのガソリンを調達してくるのが仕事だ。そして起業家と投資家は同じ車に乗って、新しい世界を見に行く旅に出る。

 今の世界は、このふたりの旅の先にできたものなんだ。

 今、君の目の前にあるこの机は、成功した起業家が何人も座っていた場所だ。彼らはいつも、君が持っているような行き場のない熱だけを持って、投資家である僕の前に現れた。

 僕が起業家と言葉を交わし続けてきたこの机からは、たくさんの成功が生まれていった。

 たとえば大企業に自分でつくった事業を35億円で売った男も、この机の前に座っていた。

 最初に出会ったとき、彼は24歳だった。放っておけばニートにもなれないような若者だった。長い髪はボサボサで、こちらがちょっと語気を荒らげて話すとおどおどして、まるで人とうまく話せない。

 将来の全選択肢は「ニート、フリーター、ヒモ、フリーランス、あるいは経営者」。つまりは、逆立ちしても「普通の会社員」なんかにはなれないような男だった。彼はその中から消去法で経営者を選び、起業を決意した。

 最初は会議室もないオフィスで、新入社員の面接の仕方もわからなかった彼が成功し、本物の経営者として成長してゆく姿を近くで見ていたとき、僕は、これこそが自分の生きがいだと何度も思ったものだ。

 もちろん良いことばかりは起こらない。死にそうな顔でこの机に現れた起業家も少なくない。むしろそっちのほうが多いくらいだ。事業がうまく進まず、資金が枯渇しかけているのだ。聞けば飯も食っていないという。なんとか追加の投資を約束して、いっしょに近くのローソンへカップラーメンを買い出しに行った。

 起業家に「お前は詐欺師だ」と鼻先で罵られたこともある。さらには全国ニュースになったスキャンダルに巻き込まれ、世界中の恨みと妬みのすべてをこの身に受けたこともある。

 それでも、僕は言い続ける。世界の誰に何を言われようと。世界がどんな危機的な状況にあろうと。

 君はかならず、成功する。

 僕はこの言葉を、この机に座る起業家に言い続けてきた。それが僕の「ベンチャーキャピタリスト」、つまりベンチャー向け投資家としてやってきた、もっとも大切な仕事だった。

 投資家という存在について、金にモノを言わせて偉ぶっている”嫌なやつ”や、裏に隠れて何をやっているかよくわからない”不気味な存在”を想像していた人は、少しはそのイメージが変わるだろうか。

 この世界を本当に前進させるようなアイデアを持って、命をかけて努力をしている起業家たちに、真に正しい支援をし続けること。成長した彼らが、正しい称賛を受けられるようにすること。そしていっしょに、世界をより良く変えていくこと。

 投資家の仕事というのは、いわば世界の未来をつくることなんだ。

 僕がこの机で若き起業家たちに話してきたことを、今から7日間かけて君に話そう。

 いわば、一対一の特別講義だ。

 誰にでも、過去の自分に伝えたいことってあるだろ? たとえば、とくに目的もなく、まわりに流されて生きていた、学生時代の自分に。「時間あるうちに、英語やっとけよ」とか、「好きな人にちゃんと思いを伝えろよ」とかさ。

 これから話すことは、今の僕が、まだ「何者でもない」過去の自分に伝えておきたいことを1週間分にまとめたものだと言えるかもしれない。もしくは、ベンチャーキャピタリストは世界一価値のある職業だって、まだそんな仕事が世の中にあることを知らなかった二十歳の自分に、言い聞かせたいのかもしれない。

 とにかく、若いときの自分にも言ってやりたいんだ。

 君はかならず、成功する、って。

 もし君が本当に成功を目指し、行動したいと思ったら、ぜひこの机まで話しに来てほしい。

 議題は、君と世界の未来だ。

 僕はいつでもそこで、君が来るのを待っている──。

佐俣アンリ(さまた・あんり)
僕は君に、資本主義の世界における<br />「究極の成功」について教えよう

1984年生まれ。慶應義塾大学経済学部卒業。松山太河氏がパートナーを務める「EastVentures」にてFreakOut、CAMPFIRE等への投資及び創業支援を経て、2012年「ANRI」を27歳で設立。独立系ベンチャーキャピタルとして、主にインターネットとディープテック領域の約120社に投資している。VCの頂点をめざし、シードファンドとして国内最大となる300億円のファンドを運営中。現在の主な投資先は、LayerX、NOT A HOTEL、hey、Mirrativ、アル、Rentioなど。
2017年には、ビル一棟を使ってスタートアップを支援するインキュベーション施設「Good Morning Building by anri」を渋谷にオープン。投資先ベンチャーのオフィス、ミーティングルームやカフェなどがあり、ANRIを中心としたコミュニティが形成され、起業家のアジト、梁山泊の様相を呈している。日本ベンチャーキャピタル協会理事。ツイッターは@Anrit