コロナ禍の就活で明暗を分けたのは「情報量」だった、採用のプロが総括新型コロナウイルスで21年卒の就活と採用は激変 Photo:PIXTA

新型コロナウイルスの感染拡大により、就職/採用活動は混迷を極めている。新卒採用・人材開発サービスを手掛けるダイヤモンド・ヒューマンリソースで、人気企業の採用から育成までを支援する採用コンサルタント、福重敦士氏が、企業、学生双方の「今」の事情を知る立場から、新卒採用の最前線をさまざまな切り口で紹介する。第1回は2021年卒の新卒就職活動、採用状況を総括する。

 これから毎回、新卒就職活動、採用活動についてさまざまなテーマでお話ししていきます。第1回はほぼ終わりつつある2021年卒の就活、採用を総括してみたいと思います。

誰も経験したことのない
オンライン就活第1世代

 ご存じの通り、新型コロナウイルスの感染拡大の影響で、今年は前例にない就職・採用活動となりました。企業も学生も、何の準備もないまま、いきなりオンラインでの活動を余儀なくされたのです。21年卒は「オンライン就活第1世代」といえるでしょう。

 今年は内定を出すまで全てオンラインで、結局、対面の面接をせず、一度も応募者と直接顔を合わせないままで採用を終了した会社も多かったようです。何しろWEB面接は、企業にとっても学生にとってもほぼ初めての体験。それだけに、面白いと言っては語弊がありますが、こんなこともありました。

 緊急事態宣言で外出の自粛が要請され、多くの企業で在宅勤務を推奨していました。ところが、ある業界では、「個人情報保護」「守秘義務」などの観点から、面接担当者が自宅で採用のWEB面接を実施することを禁じていたため、わざわざ出社して、社内に特別に設けられたWEB面接専用ブースで面接を行っていたというのです。これなどは笑い話で済みますが、他にも、いろいろと例年通りにいかないこともあったようです。

 面接は企業にとって、志望動機などを本人の言葉で聞く場ですが、ドアのノックや開け閉めの仕方、会釈などの作法や態度、そして、ちょっとした立ち居振る舞いから感じ取れる「人となり」を見極める重要な場でもあります。髪はとかしてあるか、靴は磨かれているかといった、上から下までトータルの身だしなみや清潔感もチェックの対象です。オンラインでは、それができません。極端な話、上はビシっとしたスーツ姿でも、下はジャージや短パンかもしれないのです。

 学生がカンニングペーパーのように、言うべきことを見える場所に貼っておき、それを見ながら面接することも可能です。対面だと緊張して言いたいことが飛んでしまうような人も、オンラインなら落ち着いて言えるということもあったと思います。もちろん慣れてくれば、企業側も学生が何かを読み上げているのか、本当に考えて話しているかの区別はつくと思いますが。

 細かい言外の情報がなく、また内定までに、対面で実際に話をして信頼関係をつくったわけではないので、企業側は、学生に内定を出したものの、これで来年入社してもらったとしても、本当にうちでやっていけるのだろうか、何かちょっとしたことですぐに辞めてしまうのではないかという不安が募っていることは確かです。