HSP専門カウンセラーが語る「繊細さんの幸せの鍵」とは

 なぜ自分はストレスに耐えられなかったのだろう? どうして気にしすぎてしまうんだろう? 鈍感だったらもっと楽に生きられるのに──。
 あなたには、仕事でそんな悩みを持った経験はないだろうか。まわりの人が気にしないような小さなことが気になる、相手の気持ちを敏感に察知してしまって疲れるなどの悩み。実はそれはあなたのせいではなく、「繊細」な気質があるというだけなのかもしれない。
『世界一受けたい授業』など多数のメディアで話題のHSP(Highly Sensitive Person:とても敏感な人)専門カウンセラー・武田友紀先生は、「繊細さ」は「幸せを感じるため」の素敵な感性であると語る。
 今回は、「繊細な感性を持つからこそ」深く味わえる幸せを紹介する『今日も明日も「いいこと」がみつかる「繊細さん」の幸せリスト』の発売を記念し、著者・武田先生に取材を行った。
 ストレスで会社を2年間休職したことがきっかけでHSPを自覚したという武田先生は、「繊細さは克服するべき課題ではなく、毎日の幸せを存分に味わえる大事な感性である」と語る。その真意や、この本にこめた思いを徹底して聞いてみた。(取材・構成/川代紗生、撮影/疋田千里)

「繊細さん」と「神経質」は違う

──私自身も「繊細さん」だと思うのですが、「繊細さを大切にしたい。けれども、細かいことを気にしない人でありたい」という矛盾した感情にいつも悩まされています。そんなとき、どのように心を整えていったらいいと思いますか?

武田 細かいことが気になるといっても、自然体で気になるときと、不安から気になるときの2パターンがあるんです。自分がどちらなのか、まずは見極めたほうがいいかもしれません。

「もっとこうしたら良くなる」とパッとわかったり、周りの人の感情が、目の前のコップが見えるかのようにわかってしまうというのは、繊細さんにとっては自然なことなんです。自然に目に入るものを「気にしないようにしよう」とするのは、目の前のコップを視界から消そうとするようなもので、自分にとって不自然な行為ですよね。でも、「本当は気にしたくないんだけど、間違ったらどうしようと不安に思うから気になる」ということであれば、それは繊細だからじゃなく、神経質になってしまっているのかもしれません。

──なるほど、「繊細さん」と「神経質」はまた別物なんですね。

武田 はい、別物です。繊細さんかどうかにかかわらず、神経質という状態は起こります。非・繊細さんのなかにも神経質な人はいますよ。もちろん繊細さんのなかにも、神経質な人はいますが、そうでない人もいる。「神経質」というのは、気質そのものではなくて、不安な状況から身を守ろうとして出てくるものです。

 安心できない環境で育つと、自分を否定されたり、守ってくれる人がいなかったりして、どうにか自分で自分を守らなくてはならない。「細かくチェックしないと、あとで怖いことが起こるかもしれない。間違ったら大変なことになる!」といった強い不安から、神経質な状態が生まれます。だから、小さなことが気になる時は、それが自然体で気づいているのか、それとも不安からくる神経質さなのか、見極めたほうがいいですね。

HSP専門カウンセラーが語る「繊細さんの幸せの鍵」とは武田友紀(たけだ・ゆき)
HSP専門カウンセラー。自身もHSPである。九州大学工学部機械航空工学科卒。大手メーカーで研究開発に従事後、カウンセラーとして独立。全国のHSPから寄せられる相談をもとに、HSPならではの人間関係や幸せに活躍できる仕事の選び方を研究。HSPの心の仕組みを大切にしたカウンセリングとHSP向け適職診断が評判を呼び、日本全国から相談者が訪れる。著書に『今日も明日も「いいこと」がみつかる「繊細さん」の幸せリスト』(ダイヤモンド社)、『「気がつきすぎて疲れる」が驚くほどなくなる「繊細さん」の本』(飛鳥新社)、『繊細さんが「自分のまま」で生きる本』(清流出版)がある。ラジオやテレビに出演する他、講演会やトークイベントなども開催し、HSPの認知度向上に努める。

──見極める方法は、何かあるのでしょうか?

武田 自分で判別したい場合は、そこに不安があるのかどうかがひとつの手がかりです。家族に問題があったとか、大きな失恋をしたとか、不安の原因として過去に心当たりがあるかどうかですね。神経質さには、親子関係や学校でいじめを受けた経験など、育った環境が影響していることが多いが印象があります。カウンセリングなどで「怖かった」「嫌だった」という幼いころの気持ちを出せるようになると、解消につながります。

 ただ、自分一人で見分けるのはすごく難しいので、カウンセリングを利用するかどうかは「困り度」を目安にするといいかもしれません。日常生活がすごくつらいとか、どんな職場に行ってもつらくなって辞めてしまうという場合は、おそらく、繊細な気質だけが原因ではないと思います。過去のトラウマがあるなど、心理的な要因が他にある可能性があるので、専門家にカウンセリングを受けることで解決の糸口がみつかりやすいと思います。
もし「気にしちゃうときもあるけど、まあ別にいいかな」と思える程度ならば問題ではないので、しんどさで判断したらいいと思います。

 繊細さにまつわる困りごとが楽になることで、結果的に親子関係などにも向き合えるようになることもありますから、まずは繊細さの悩みについては対処法を試してみて、それでも解決しなかったらカウンセリングに行ってみるなど、順を追って考えてみるのも良いと思います。