◆「すべて同意! ビジネス価値創出への『5つの心構え』をまとめた決定版だ」(入山章栄・早稲田大学ビジネススクール教授)
◆「これは仕事術ではない。ゲームのルールは変えられることを証明した珠玉の実践知だ」(鈴木健・スマートニュース創業者・CEO)
コロナ禍で社会構造やビジネスモデルが変化する今、「生産性」「効率」「成果」が見直されている。そんな中、各氏がこぞって大絶賛するのが『その仕事、全部やめてみよう』という書籍だ。
著者は、ITベンチャーの代表を10年以上務め、現在は老舗金融企業のCTOを務める小野和俊氏。2つのキャリアを通して、それぞれがどんな特徴を持ち、そこで働く人がどんなことに悩み、仕事をしているのかを見てきた。その中で、ベンチャーにも大企業にも共通する「仕事の無駄」を見出す。
本連載は、具体的なエピソードを交えながら、仕事の無駄を排除し、生産性を高めるための「仕事の進め方・考え方」を解説するものだ。

「いい人が採れない」に効く2つのアプローチPhoto: Adobe Stock

 「いい人が採用できない」は多くの会社が抱える悩みだ。とりわけ私が身を置いてきたエンタープライズITの業界では、2018年時点で有効求人倍率が6倍前後となっており、1人の求職者を6社がとり合う状況になっている。

 これがエンジニアとなるとさらに倍率が高くなり、当然、優秀なエンジニアとなるともっと高くなる。採用難が叫ばれる業界に長くいる中で、私はこれまでチームメンバーには恵まれてきたのだが、いい人に出会えるよう工夫してきたこともある。

(1)会社や部署、プロジェクトのメッセージを明確にする

 採用に苦戦しているなら、最初に見直すべきは会社が対外的に発信しているメッセージだ。何を大事にしているのか。どんな理由でどんなことを考えて人を集めようとしているのか。そこがきちんと伝われば、いい人が興味を持ってくれる確率はグッと上がる。

 例えば、アプレッソではエンジニアを募集する際に、「自社製品開発で、妥協せず丁寧にプログラムを書きたい人」を求めていることをメッセージとしていた。

 IT業界では、自社製品を持ちそれをメインのビジネスにしている企業は少ない。加えて、納期や予算の制限があり、ある程度妥協して納品せざるを得ないプロジェクトが多い。こうした現状に嘆いているエンジニアが数多くいることを知っていたからだ。

 プログラマー同士の面接では、日本語と同じレベルでプログラミング言語が共通語となる。経歴を説明してもらうより、プログラムのソースコードを見ながら会話したほうが、お互いどんなレベルで仕事をしているのかを具体的に知ることができる。こうした面接の方式を「コーディング面接」と言うのだが、これをすると、お互いのプログラミングレベルをありのままに理解できる。

 会社は「妥協せず丁寧にプログラムを書く」と言っているが、どの程度の意味で言っているのか。また、具体的なソースコードで言うとどんなレベルのことを言っているのか。これらを包み隠さずお互いに知ることができるのだ。

 2019年3月にクレディセゾンでゼロからエンジニアチームを作ったときは、「大企業の中に本気のエンジニアリングチームができて、それで事業が大きく変わったら、面白いと思いませんか」というメッセージをブログに書いてエンジニアを募った。

 ベンチャー企業やエンタープライズ系IT企業から多くの応募があり、数か月でチームが立ち上がった。募集開始からちょうど半年後の9月には、最初のプロダクトである「セゾンのお月玉」(セゾンカードの利用金額500円[税込]ごとに、現金1万円が当たる抽選券を1枚、毎日最大3枚まで発行し、毎月抽選で1万人に現金1万円が当たるプロジェクト)をリリースでき、大きな話題になった。