香港国家安全法成立で「一国化」が進む香港はどこへ向かうのか?8月5日、尖沙咀から見た香港島 Photo by Yoshikazu Kato

 香港情勢がコロナと政治の狭間で揺れている。

 林鄭月娥(キャリー・ラム)行政長官率いる香港特別行政区政府、そしてその背後で同氏、同政府を指揮する中国共産党指導部は、第2波ともいえるコロナショックが香港社会を覆う現状に便乗する形で、公共空間での集会の禁止、民主派候補者の立法会(香港議会)選挙への立候補資格剥奪(DQ:Disqualification)、そして今年9月6日に予定されていた同選挙の1年延期などを通じて、一連の「反送中」抗議活動やそれを通じて蓄積、露呈されてきた反中、反共感情、および民主派のもくろみや動きを封じ込めようとしているのだ。

香港にも到来したコロナ第2波
政府は市民の行動と経済を制限

 香港政府の言葉を借りれば、昨年12月以来、コロナの波は目下「最も深刻な状況」に直面している。最近新たに発覚した感染状況を見てみると、7月27日145人、28日106人、29日118人、30日149人、31日121人、8月1日125人、2日115人、3日80人、4日80人、5日85人、6日96人となっている(8月6日までで累計感染者数3849人、死亡者数46人)。感染者「ゼロ」更新が続いていた一時期を思い起こせば、第2波は確実に到来しているといえる。

 しかも、今回の特徴は、海外からの逆輸入ではなく、香港内部における感染者数の急増である。例えば、8月1日の感染者125人のうち、124人が現地在住の市民間で感染している。

 5日連続で100人以上の新たな感染者が出たことを受けて、7月27日、香港政府は、29日から8月4日までの7日間、(1)レストランにおける店内飲食を終日禁止。持ち帰り、デリバリーは可。フードコートの飲食エリアも閉鎖。(2)公共の場での集合制限を4名から2名までに変更。(3)交通手段利用時は、室内外にかかわらず公共の場ではマスク着用を義務付ける。違反者には最大5000香港ドル(約6万8000円)の罰金が課せられる。(4)ジム、プール、サウナ、カラオケ、酒場などの営業停止、を突如発表した。この政策はその後延長されており、筆者が本稿を執筆している時点で、8月11日までの延長が確定している。

 ちなみに、(1)に関して、実施後、勤労者に不便や困難が生じると判明したため、7月31日から日中(午前5時から午後5時59分)の店内飲食は可能と変更された(ただし、1卓の利用人数は2名まで、収容人数は通常座席数の50%まで、最小1.5mの距離規制や隔壁の使用、酒類提供場所の閉鎖は継続)。