やむを得ない緊急避難策と言えるが、勝算はあまりなく、ジレンマは深刻――。

 オバマ米政権が今週発表したゼネラル・モーターズ(GM)再建プランは、こんな評価が妥当ではないだろうか。

 もし、米政府が何の措置も講じなければ、GMとクライスラーの2社は昨年12月に破たんしていたはずだ。そうなっていれば、「100年に1度」と言われた経済危機が一段と深刻なものとなっていたことは明らかである。

 今なお、世界がその深刻な危機から脱していない以上、米政府には、両社を自然淘汰に任すという選択肢がハナから存在しなかった。建国以来の伝統である「自由主義経済」の原則をかなぐり捨てて、GM再生を目指す以外に道は無かったと言える。

 ただ、今回の措置によって、多額の負債を免除されたとしても、両社が簡単に再生できると考えるのは早計だ。というのは、この2社には「売れる車」を作るノウハウがないからだ。それどころか、総額850億ドル前後に達する、一連の支援のために費やされた公的資金の回収のめどもたっていない。

 まず、米政府が6月1日(米東部時間)に公表した再建策(ファクツ・シーツ)の柱をざっとみてみよう。

(1)コスト構造の改善のため、大胆な合理化を行う。(これ以上ならば利益が出ることになる)損益分岐点を年間販売台数1600万台から1000万台に引き下げる。

(2)271億ドルの無担保債を新GMの10%の株式と15%分のワラント(新株購入権)に交換する債務圧縮案に、少なくとも54%の債券保有者が合意した。

(3)痛みを伴うが、必要な合理化は断行する。生産拠点のうち11工場を閉鎖し、3つを休止するものとする。

(4)GMのチャプター11(米破産法のこと、日本の民事再生法に相当)の下での再建を可能にするため、米政府は301億ドルの資金を提供する用意がある。資金援助はこれが最後で、これを超える援助は行わない。

 米政府は、従来分も含めて資金提供の見返りとして、新GMの88億ドル相当の債務と優先株、発行済み株式数の60%に相当する新GM株式を受け取る。複数の取締役を選任する権利も有する。