6月に入って、ついにインテルが新CPUの「Atom」を発表した。ずいぶん前からその存在は明らかになっており、発表は時間の問題だった。

 一般的な認知度はあまり高くないが、実は、パソコンのあり方を変えるほどのインパクトがあるCPUなのだ。

MSIのネットブックU1000
MSIのネットブックU1000。発売時期や価格は未定だが、非常に割安感のある価格で、この夏に登場することは間違いないだろう。CPUはAtomでOSはWindows XPだ。

 これまでのCPUは、基本的に高性能化を目指していた。もう10年以上にわたって、前シーズンよりもより高性能な製品が登場し続けてきたのだ。もちろん、モバイル向けのCPUは、フルサイズノート用のCPUに比べると性能は劣る。だが、前のシーズンよりは高性能だった。ユーザーは、高性能CPUを搭載した新しいパソコンに買い換えることを繰り返してきたのだ。

 ところがAtomは、格安向けとして性能を絞ったCPUだ。いわゆる、ネットブックやネットトップなどと呼ばれる、軽くコンパクトで5~6万円程度のパソコンが大挙登場しようとしている。Webやメール中心に性能を割り切ったノートPCであり、Atomはその心臓部なのだ。ヘビーな作業に利用しないので、性能は最低限だ。

「割り切り感」さえ納得できれば、
ネットトップはとにかく安い

 ネットトップは、処理性能だけでなくバッテリー駆動時間も割り切っているのが従来のモバイルノートとの違いだ。堅牢性や高級感など――従来のモバイルノートの基準で考えると、どこもかしこも割り切りばかりだ。だが、とにかく安い。コンパクトデジカメを買える程度の5万円という価格だから、納得できてしまうユーザーが多い。特に、パソコンにかけられるコストが低いIT発展途上国では、歓迎されること間違いなしだ。世界的に見れば、今後、大ボリュームのセールスが期待できるジャンルの製品なのだ。

 およそ1年半程前に「Windows Vista」が登場し、そのヘビーさからCPUに対する要求が一気に高まった。ところが、いまや割り切ったAtomでもWindows Vistaが動作する。もちろん、重いと感じる場面もあるが、インターネット中心の用途に割り切るなら十分とも言える。