大ベストセラー『夢をかなえるゾウ』シリーズ(文響社)でも知られる作家の水野敬也さん。最新刊『夢をかなえるゾウ4』では、「余命3ヵ月」を告げられた会社員の行動を通して「夢を手放す方法」を説き、大きな反響を呼んでいる。
一方、Twitter『ゲイの精神科医Tomyのつ・ぶ・や・き♡』が絶大な支持を集め、最新刊『精神科医Tomyが教える 1秒で悩みが吹き飛ぶ言葉』(ダイヤモンド社)でも悩める読者に「生きる勇気」を与えている精神科医Tomy先生。
一見、接点のなさそうな2人だが、実は名古屋の名門中高一貫校である東海中学・高校(男子校)の先輩・後輩という間柄だ。当時の水野さんはモテるために必死だったというが、Tomy先生はまったく別の風景を見ていたという。
そんな2人が著書に秘めた思い、人生にとって本当に大事なこと、価値観の多様性を認めるということ、さらに「人は何のために生きるのか」という壮大なテーマをめぐって対談した内容を3回に分けてお届けする。

「死」について考えてみた。Photo: Adobe Stock

ストレスを減らすたった一つの方法、それは「手放す」こと。

「死」について考えてみた。精神科医Tomy
1978年生まれ。某名門中高一貫校を経て、某国立大学医学部卒業後、医師免許取得。研修医修了後、精神科医局に入局。精神保健指定医、日本精神神経学会専門医、産業医。精神科病院勤務を経て、現在はクリニックに常勤医として勤務。2019年6月から本格的に投稿を開始したTwitter『ゲイの精神科医Tomyのつ・ぶ・や・き』が話題を呼び、フォロワー数が急増。覆面で雑誌、テレビ・ラジオ番組にも出演。舌鋒鋭いオネエキャラで斬り捨てる人は斬り、悩める子羊は救うべく活動を続けている。前著『精神科医Tomyが教える 1秒で不安が吹き飛ぶ言葉』(ダイヤモンド社)は発売即、大反響となりベストセラーに。最新刊『精神科医Tomyが教える 1秒で悩みが吹き飛ぶ言葉』(ダイヤモンド社)も発売即、大重版となっている。

精神科医Tomy:ボクにはかつて「世界のすべて」と言えるようなパートナーがいました。同じ精神科医の彼とは7年半くらい付き合っていたんですけど、最終的に死別という結末を迎えてしまいました。死別した後は、途方に暮れるあまり、何をすればいいのかわからなくなってしまったんです。

苦しい状況の中で生きていこうと思ったとき、彼に対する執着を手放す必要に迫られました。それまでのボクは、何かトラブルが起きたときに、彼に相談したり、一緒に乗り越えたりしてきたんですが、もはや頼るべき彼はいない。

だとしたら、彼に対する執着を手放すしかないと思ったわけです。そうやって、少しずつ気持ちを切り替えていき、「今の人生はあるだけマシ」「これからの人生で起きることはすべてオマケ」と思えるようになったことで、ちょっとラクになりました。

ボクは実生活ではゲイであることをオープンにはしていません。そのことで生じる生活上のトラブルも多々あります。トラブルが起こるたびに、自分一人で解決することを繰り返してきました。ただ、一人で悩んでいるとき、ふいに頭の中でパートナーが語りかけてくれることがありました。「こういうときは、こうしたほうがいいんじゃない?」というセリフが頭の中に浮かんでくるようになったんです。

「これは使える」というアドバイスが聞こえたときには、忘れないうちにメモアプリのEvernoteに書きとめ、「いつか生き方のハウツー本として形にできればいいな」と思いながら、ひたすらストックしていました。その後、ストックしたネタをTwitterで発信したら、たくさんフォローしていただけるようになり、たった半年で13万フォロワーに増えました。

ツイートした中で一番反響があったのは「ストレスを減らすたった一つの方法。それは『手放す』こと。執着を手放す。『こうならなきゃいけない』を手放す。人をコントロールしたい気持ちを手放す。手放せるものは沢山あるわ。手放せば手放すほど心は楽になっていく。最後にどうしても手放せないものが残る。これが生きる理由よ。」というメッセージです。

「執着を手放す」というのは究極的な問題解決法です。ただ、「手放しなさい」「手放したらラクになるよ」なんて言われても、簡単に手放せることばかりではないですよね。

だから、ボクは「手放す」ということを、状況に応じて、実行しやすい形で表現しようと考えています。「手放す」までの過程を細かく分解して小刻みな階段のようなものを作ることで、無数のアドバイスができます。そんなふうに、ボクのメッセージは、シチュエーションに応じて、少しでも気持ちを手放せる方向にアドバイスをするものになっていると思います。