大ベストセラー『夢をかなえるゾウ』シリーズ(文響社)でも知られる作家の水野敬也さん。最新刊『夢をかなえるゾウ4』では、「余命3ヵ月」を告げられた会社員の行動を通して「夢を手放す方法」を説き、大きな反響を呼んでいる。
一方、Twitter『ゲイの精神科医Tomyのつ・ぶ・や・き♡』が絶大な支持を集め、最新刊『精神科医Tomyが教える 1秒で悩みが吹き飛ぶ言葉』(ダイヤモンド社)でも悩める読者に「生きる勇気」を与えている精神科医Tomy先生。
一見、接点のなさそうな2人だが、実は名古屋の名門中高一貫校である東海中学・高校(男子校)の先輩・後輩という間柄だ。当時の水野さんはモテるために必死だったというが、Tomy先生はまったく別の風景を見ていたという。
そんな2人が著書に秘めた思い、人生にとって本当に大事なこと、価値観の多様性を認めるということ、さらに「人は何のために生きるのか」という壮大なテーマをめぐって対談した内容を3回に分けてお届けする。

「多様性」ってどういうこと?Photo: Adobe Stock

競争から離れて見えてきたこと

水野敬也
1976年生まれ。慶応義塾大学経済学部卒。初の著作『ウケる技術』(共著・新潮社)が25万部のベストセラーに。代表作である『夢をかなえるゾウ』シリーズ(文響社)は累計400万部を超える大ヒットシリーズとなり、最新刊『夢をかなえるゾウ4』でも大きな反響を呼んでいる。『人生はワンチャンス!』『人生はニャンとかなる!』(ともに文響社)、『雨の日も、晴れ男』(文春文庫)などの書籍でも知られ、『人生はニャンとかなる!』は2014年度全書籍売り上げの2位を記録するメガヒットとなった。また、恋愛体育教師・水野愛也として、『LOVE理論』『スパルタ婚活塾』(ともに文響社)、映画『イン・ザ・ヒーロー』の脚本も担当するなど活動は多岐にわたる。

水野敬也:僕の中学2年のときの同級生に、Y君という人がいました。彼は、近隣の女子校には知らない人がいないと言われるほどの超イケメン。実際、東海中学の文化祭には、Yくん目当ての女子がたくさんやってきました。

僕はY君目当てに文化祭にやってきた女子から、「ちょっと、どいてよ! Yくんが見えないじゃない!」と邪魔者扱いされたのを今でも覚えているんです。とんでもない差別じゃないですか。インド独立の父、マハトマ・ガンジーが南アフリカで1等車の乗車券を持っていたのに、「お前は白人じゃないから降りろ」と言われて一晩中、駅で泣いたというエピソードがあるんですけど、まったく同じじゃないかと思ったんです(笑)。

僕はそのとき、自分に使命ができたのを実感しました。「Y君は生まれつき90点の顔を持っている。僕は20点かもしれない。でも、僕が努力で70点を積み上げて、Y君と同じぐらいモテるようになったら、その努力のプロセスを人に伝えることができる。そのとき、僕は、95点の人間になれる」と。あの日から「いつか人に伝える」というモチベーションのもと、365日24時間を努力で埋め尽くしながら、他人との競争の中でピラミッドの頂点を目指して登り続けてきました。

一方、あるとき、ふと「オレって、私立中学に進学させてもらえた時点で、実は恵まれていたんだよな」と気づきました。そもそも家庭の事情で、私立に進学させてもらえない子だっているわけです。つい最近まで、そんなことにも気づかず、ひたすらピラミッドを登ろうとしてきた自分は何て浅はかだったんだろうと反省しました。

本当はピラミッドを登るんじゃなくて、ピラミッドと戦うべきだったんじゃないか、と。だから今は、子どもの貧困とか気候変動の問題などに興味を持ち、自分にできる社会貢献に取り組んでいます。

今、これを読んでいる人で「自分はまだピラミッドを登りたい」と思う人は、ぜひ登ってもらいたい。登った先にも答えは必ず答えはあります。ただ、そのピラミッドが嫌になったときに、そこから抜け出るルートもあるんだということをお伝えしたいですね。ピラミッドという枠組みから出たところにも、いろんな活動はあるはずです。