乱戦!証券サバイバル#5Photo by Toshiaki Usami

緊急事態宣言下の4月、野村ホールディングスの新社長に就いたのが、M&A(企業の合併・買収)などを手掛けるホールセール部門出身の奥田健太郎氏だ。日本を代表する巨艦証券会社は世界で勝ち抜くことができるのか。特集『乱戦!証券サバイバル』(全13回)の#5は、社運を懸けた野村の構造改革に迫る。(聞き手/ダイヤモンド編集部 重石岳史)

「パブリックからプライベートへ」
伝統的ビジネスモデルを大転換

――4~6月期の決算はホールセール部門が過去最高益と全体の業績を押し上げた。好調の要因は何か。

 この2、3年、全社的な構造改革に取り組んでいるが、ホールセール部門はわれわれの強い領域にシフトする選択と集中を進めている。

 4~6月期は新型コロナウイルスの感染拡大の影響で非常にボラティリティが高いマーケット環境で、特に(金利やクレジット関連を取り扱う)フィクスト・インカムが好調だった。

 うちは米国のバルジブラケット(巨大投資銀行)と比較しても、かなり収益を出せている。昨年の米国債売買高シェアは8%で5位。私がニューヨーク駐在中にしっかり取り組むと決めたエージェンシーモーゲージ債は2位。エクイティフローデリバティブは10~12月に1位だった。

 日本の会社は米国で1番になれないというイメージを持たれているかもしれないが、われわれが狙ったところでしっかり取れている。この数年間に取り組んできた選択と集中に加え、今回マーケットが大きく動いたのでトップラインを伸ばすことができた。

 昨年度から1400億円のコストカットも進めている。6月末時点で計画の7割強を終え、残る約3割は結構難しいコーポレートの部分ではあるけれども、しっかりと構造改革を進められている。今回の決算が、全て実力だとは思っていないが、マーケットが動けばしっかりと利益を出せるプラットフォームができつつある。

――なぜ野村は米国で戦えているのか。