「障がいのある人事担当者」が求職側と求人側に伝えられること

民間企業による障がい者の雇用人数が数字を年々伸ばし続けている。しかし、雇う側の企業も、雇われる側の障がい者も、それぞれさまざまな状況下に置かれていて、抱えている問題も異なっている。双方にとって、目指すべき、価値のある「働き方」とは何か?――書籍『障がい者の就活ガイド』『会社を変える障害者雇用』の著者であり、自身も障がいがありながら企業の人事部に勤め、障がい者の雇用促進を続ける紺野大輝氏に話を聞いた。(ダイヤモンド・セレクト「オリイジン」編集部) 

*本稿は、現在発売中のインクルージョン&ダイバーシティ マガジン 「Oriijin(オリイジン)2020」からの転載記事「さまざまな障がい者の雇用で、それぞれの企業が得られる強み」に連動する、「オリイジン」オリジナル記事です。

“二極化”している、民間企業の障がい者雇用

 民間企業における障がい者の雇用は年々増え続けていますが、現在から20年ほど前の、紺野さんが新卒者として就職活動をしていた頃の企業の姿勢はどういうものでしたか?

 「私が就職活動をしていた1999年頃は、まだ差別が当たり前のようにありました。『うちは新卒では障がい者を雇わない』と面接で罵声を浴びせられたこともありました。また、内定を得た企業からも、入社直前に『君は税金対策で雇っただけだから、辞めさえしなければいい。期待はしていない』と人事担当役員に言われました。障害者雇用納付金を払うことと障がい者を雇用するのはどちらが得かを天秤にかけている企業が多かったです」

 平成から令和になり、ダイバーシティ社会の中で時代も変わりつつあります。ここ数年の企業の障がい者雇用への向き合い方はいかがでしょう?

 「企業の障がい者雇用への関心は年々高まり、障がい者の雇用者数は、毎年過去最高を更新しています。その一方で、“二極化”が進んでいます。障がい者が定着し戦力として活躍している企業と、早期の退職が多く採用を繰り返している企業です。うまくいかない企業の特徴は、採用がゴール、数合わせが目的になっています。『障がい者は仕事ができない』と思っているからですね。しかし、それは誤解です。たとえば、あるクリーニング工場では、従業員の30%が障がい者ですが、業績は伸び続けています。このような企業では、『法定雇用率を達成するための雇用』という考えはありません」

 今年に入ってからの新型コロナウイルスの影響はいかがですか?

 「新型コロナウイルスの影響で、障がい者雇用の環境はやや厳しくなっています。特に中小企業は、目の前の資金繰りで精一杯で障がい者雇用まで手が回らないという話も聞きます。その一方、厳しい環境でも障がい者雇用を継続する企業もあります。ある大手航空会社は、2021年度新卒採用の中止を決定しましたが、障がい者採用は継続すると発表しました」