安部晋三首相の辞任に一つの時代の終わりを感じる。2013年、安倍政権が大胆な金融政策、機動的な財政政策、規制緩和など成長戦略の“3本の矢”を掲げて始動したとき、長年打ちひしがれていた日本に久々に高揚感が湧き上がった。

 強烈な印象を残したのは、第1の矢の金融政策による円安・株高。それだけに、辞任報道で市場が危惧したのは円高・株安への揺り戻しだ。実際、ドル円は105円近くへ下落、日経平均株価は速報後すぐ700円ほど急落した。

 しかし、安倍首相辞任で、アベノミクスに輪をかけた現行の財政金融政策が後退するとは想定されにくい。新型コロナウイルス対策は今後数年継続せざるを得ない。ただし、円安の追い風を受けた安倍政権期の終わりは、円高局面と重なる巡り合わせとなろう。