◆「すべて同意! ビジネス価値創出への『5つの心構え』をまとめた決定版だ」(入山章栄・早稲田大学ビジネススクール教授)
◆「これは仕事術ではない。ゲームのルールは変えられることを証明した珠玉の実践知だ」(鈴木健・スマートニュース創業者・CEO)
コロナ禍で社会構造やビジネスモデルが変化する今、「生産性」「効率」「成果」が見直されている。そんな中、各氏がこぞって大絶賛するのが『その仕事、全部やめてみよう』という書籍だ。
著者は、ITベンチャーの代表を10年以上務め、現在は老舗金融企業のCTOを務める小野和俊氏。2つのキャリアを通して、それぞれがどんな特徴を持ち、そこで働く人がどんなことに悩み、仕事をしているのかを見てきた。その中で、ベンチャーにも大企業にも共通する「仕事の無駄」を見出す。
本連載は、具体的なエピソードを交えながら、仕事の無駄を排除し、生産性を高めるための「仕事の進め方・考え方」を解説するものだ。

仕事ができる人は「力の抜き方」がうまいPhoto: Adobe Stock

「400メートル走はペース配分が大切」。高校の陸上部で400メートルを走ることになったとき、先輩に最初にそう教えられた。ずっと全力で走り続けることはできないので、どこかで力を抜く必要がある。先輩の教えは次のようなものだった。

(1)最初の100メートルはスタートダッシュ
(2)次の100メートルは全力疾走
(3)次の100メートルはペース維持
(4)最後の100メートルはラストスパート

「すべて全力疾走じゃないか」とも思えるわけだが、ポイントは③のペース維持にある。スピードに乗った状態になると、膝を限界まで高く上げたり、地面を力強くけり上げたりせずとも、足を地面にトンと置くだけでスピードが維持できるのだ。どこかで「体力を温存すること」がコツなのである。

 この「力の抜き方」には選手それぞれに向き不向きがある。前半ある程度ゆっくり走っていたかと思えば、後半にドラマチックに加速して他の選手を追い抜くスタイルが合っている選手がいれば、最初から飛ばして、後半は追いつかれながらもなんとか粘るスタイルが得意な選手もいた。

どこで力を抜くべきか?

 社会に出て仕事をしていく中で、この「400メートル走の教え」を思い出すことが幾度となくあった。400メートル走と同様、人生もどこかで力を抜くようにしないと、速いスピードで走り続けることができない。

 常に全力疾走すれば、パフォーマンスは必ず落ちる。プログラミングで最悪なのは、集中が切れた状態で仕事をすることで、「本当はもっと効率的なやり方があるのに、あまり望ましくない設計を採用してしまうこと」だ。そこで発生した非効率は、そのソフトウェアが使い続けられる限り、ずっと尾を引くことになる。

 全力でとり組むタイミングと力を抜くタイミング。人によって自分に合ったそれぞれのスタイルがあるのだ。