新型コロナウィルスの影響で、世の中が大きく変わりつつある。そんな変化の激しい現代において「子どもに何をしてあげられるか」と悩んでいる親は多いのではないだろうか。
そこで、これまで教育を軸に取材を重ねてきた著者が、教育学から心理学までさまざまな資料や取材を元に、「家での勉強のしかた」から「遊び」「習い事」「運動」「食事」まで、子育てのあらゆるテーマをカバー、「いま、最も子どものためになる」ことを『子育てベスト100──「最先端の新常識×子どもに一番大事なこと」が1冊で全部丸わかり』(加藤紀子著)にまとめた。
発売早々、高濱正伸氏(花まる学習会代表)が「画期的な1冊が誕生した。長年の取材で得た情報を、親としての『これは使えるな』という実感でふるいにかけ、学術研究の裏付けやデータなども確認した上でまとめあげた力作である」と評するなど話題騒然の1冊だ。本稿では、特別に本書から一部を紹介する。

「パソコンに強い子」の親がしている4つのコツPhoto: Adobe Stock

プログラミングが必修化、どう対応する?

 2020年から小学校でプログラミングが必修化されました。プログラミングは、プログラミング言語という「言葉」を使ってコンピュータに指示を出し、人間の思い描いた動きをさせるものです。

 誤解されやすいのですが、必修化の目的は、子どもたちにプログラミングのスキルを身につけさせることではありません。「言いたいことを正確に伝えるには、細かく段階を踏んで説明しなければ伝わらない」という論理的な考え方を、プログラミング言語を使って学ぶことが目的です。

 プログラミングのいちばんの面白さは、自分でルールをつくれることです。

 ルールをつくるときには、ふだんは意識していないようなことにも意識を向ける必要があります。たとえばロボットを動かすときは「止まる」という動作もプログラムしないと、ロボットは永遠に止まることができません。

 世の中には、こうした「思考の盲点」に意識を向けることで、新しいアイデアが浮かんだり、考えが深まることがたくさんあります。

 プログラミングは試行錯誤をくりかえしながら、このようなきめ細かい思考を体験して学べる機会でもあります。

 では、上手に子どもに「プログラミング」を学ばせてあげるにはどうすればよいでしょうか?

【その1】プログラミングが何を実現しているかを知る

 プログラミングは、ふだんはその存在を意識することはほとんどないものの、いまや日常生活のあらゆる部分に深く関わっています。

 いつも遊んでいるゲームはもちろん、車、家電製品、ロボット、信号、そして音楽やアートまで、さまざまなものにプログラミングが生かされています。

 プログラミングを学ぶ前に、プログラミングが身のまわりのどんなものとつながっているのかを知ると、技術が身近になり、手ごたえ感をもって学ぶことができます。

【その2】パソコンに慣れる

 日本では教育現場のIT普及が遅れているものの、今後は小学校からプログラミングが導入されることもあり、中学や高校でも、パソコンを使う機会は間違いなく増えます。いずれ入試や資格試験も、パソコンで受ける形式が主流になるでしょう。

 パソコンは「習うより慣れろ」です。「有害なサイトを見てしまうのでは」「ゲームばかりしてしまわないか」といった心配もあると思いますが、フィルタリングを利用する、親のいるところで使わせる、時間を決めるなど、使える環境はコントロールできます。

 むやみに遠ざけるのではなく、「子どもにとっては学びの道具」と意識を変えたほうがいいかもしれません。

【その3】始めるのは4年生からで十分

 低学年だと集中力がなく、「遊ぶ」感覚が先行してしまうので、落ち着いて論理的思考ができるようになる4年生あたりから始めるとよいでしょう。小学1、2年生だと、プログラミングの「条件分岐」といった概念がそもそも脳の構造的にまだなじまないという研究結果もあるようです。

 低学年のあいだはむしろ、運動することで体の感覚を養ったり、遊びを通じて「実体験」を積んでおくほうが、後からプログラミングにもっと興味をもって取り組むことができます。

親ができる必要はない

 必ずしも親がプログラミングをできる必要はありません。子どもの話を聞いてあげるだけで十分です。

 プログラミングを通じての試行錯誤が、主体性を育みます。むしろ、親のほうから「教えて」とお願いして、子どもから教えてもらうことで、子どものコミュニケーション力や自信を伸ばすきっかけにもなるでしょう。

【その4】手軽に始められる教材を使う

 子どもは目に見えてわかりやすいことと、楽しさを優先します。低学年までに始めるなら、「スクラッチ」やロボットがなじみやすく、親子で楽しめます。

・インターネット上で使えるもの
アワー・オブ・コード(Hour of Code):Code.orgが世界的に主唱するプログラミング教育活動が「アワー・オブ・コード」です。このサイトでは、プログラミング学習のできるさまざまな教材をそろえています。対象年齢は「4歳から104歳まで」とうたっています。
https://code.org/learn
スクラッチ:プログラミングでアニメやゲーム、音楽などがつくれるサイトです。https://scratch.mit.edu

・ものを動かす体験ができる手軽なキット
マイクロビット(BBC micro:bit):片手に収まる大きさのマイクロコンピュータ。ロボットから楽器まで、プログラミングでいろいろなものがつくれます。
スフィロ(Sphero):プログラミングで動かせるボール型のロボット。まずはスフィロ・ミニ(Sphero Mini)が手軽で遊びやすいようです。

(本原稿は、『子育てベスト100──「最先端の新常識×子どもに一番大事なこと」が1冊で全部丸わかり』からの抜粋です)

参考文献
「『子どもたちは大人の発想を超えていく』プログラミング教育が今、必要な理由とは?...久木田寛直氏インタビュー」(リセマム、2018/3/2)
「若き天才プログラマー・矢倉大夢さんに聞く、プログラミング教育が必要なわけ」(リセマム、2019/9/9)