コロナ禍を73年前から予言!?小説『ペスト』が教えてくれることマスクをしていない人をむやみに攻撃してみたり、大問題が立ちはだかっているのに、どうでもいいちっぽけなことに煩わされていませんか(写真はイメージです) Photo:PIXTA

新型コロナの影響で世界は今、大きなターニングポイントを迎えています。この機会に、今までの生活や働き方を見直したり、政治経済や世界の動きに疑問、興味を持った人も多いのではないでしょうか。現在は、ネットやSNSで簡単に情報が手に入る時代ですが、そういった知的ニーズや教養を深く知ることができるのは、やはり「読書」です。そこで前回に続き今回も、明治大学文学部教授・齋藤孝氏の新刊『何のために本を読むのか』(青春出版社)から、“変化の時代”に必要な教養を身につけられる定番の名著を読み解いていきます。

今年大ブームとなった小説『ペスト』

『ペスト』という作品があることは知ってはいても、実際に読んだことがある人は少なかったのではないでしょうか?ところが今年、この本は品切れになるほどの売れ行きでした。この本に描かれていることがあまりにも今の世界の状況にそっくりで、まるで予言の書のように感じられたからでしょう。

 ペストは歴史的に3回の大流行が記録されていますが、とくに14世紀にヨーロッパで流行したときは、5000万人という膨大な犠牲者を出しました。1880年代にインドや中国で流行したのを最後に、その後、血清や抗生物質の登場でほぼ世界から駆逐されました。

 本書は、その忘れられた疫病が、1940年代のアルジェリアのオランという小都市に突然襲いかかるという設定です。大昔の病気だと思っていたが、再び襲われたら、なすすべがなかったという物語です。