賢人100人に聞く!日本の未来#44

新型コロナウイルス感染症の世界的大流行は、世界各国の経済のみならず国際関係にも大きな影響を及ぼしている。米中貿易摩擦や対ロシア関係、米大統領選挙の行方はどうなるのだろうか。特集『賢人100人に聞く!日本の未来』(全55回)の#44では、国際政治に詳しい東京大学未来ビジョン研究センター長の藤原帰一氏に、今後の国際関係の方向性について聞いた。(ダイヤモンド編集部編集委員 藤田章夫)

米中貿易摩擦の裏で進行していた
軍事的緊張の高まり

――新型コロナウイルスの感染拡大が国際政治や国際関係に与える影響はどのようなものでしょうか。

 まず、近年の国際関係でいえば、権力=力の配分が変わりました。これを権力移行といいますが、新興国の台頭といえば分かりやすいでしょう。無論、中国の台頭が第一に挙げられます。

 そして、台頭とは少し違いますが、ロシアと西側諸国の関係について変化が見られます。米国のトランプ大統領がロシアのプーチン政権との関係を重視したことで、西ヨーロッパとロシアはこれまでにない緊張関係にあります。NATO(北大西洋条約機構)に加盟する米国以外のほとんどの国が、ロシアに対する警戒を強めています。

――コロナ前は、米中の貿易摩擦の話ばかりでしたが、軍事的な緊張も高まっていたのですね。

 21世紀になって以降、中国の人民解放軍は海軍の外洋展開、つまり海洋国家化を図ってきました。これに対して米オバマ政権は強硬な姿勢を取りましたが、成果は上がりませんでした。トランプ氏の方が乱暴に見えますが、実は軍事についてはオバマ氏の方が強硬だったのです。もっとも、この両国は本気で大戦争をやろうとは思っていませんので、戦力で脅しても行動を抑えることはできません。

 やはりトランプ政権で顕著なのは、貿易で中国を抑えようとしたことです。中国は軍事大国である以上に経済大国ですので、「米国から職を奪っている」「不公正な貿易取引で中国が優位に立っている」と。そこでトランプ大統領は関税を引き上げるなど、中国に対して非常に強硬な政策を取りました。中国は限られた譲歩をしましたが、結果的に米国にとって優位にはなっていません。

 こうした米中関係を考える上において、国内要因を抜きにするわけにはいきません。