生産者と消費者を直接つなぐスマホアプリ「ポケットマルシェ」の勢いが止まらない。コロナ禍で消費のあり方が問い直されるなか、登録生産者数は、昨年8月の約1600名から約3400名に、登録ユーザー数は約4万名から約23万名に急増している。
「食」でつながるポケマルの世界観に共感するのは、生産者や消費者だけではない。同アプリを運営する株式会社ポケットマルシェ(本社:岩手県花巻市、代表取締役CEO:高橋博之)は、2020年8月24日、シリーズBラウンドで総額8億5000万円を調達した。その第三者割当の引受先には、株式会社オレンジページや株式会社丸井グループなど、意外な顔ぶれが並ぶ。聞けば、「共助の社会を実現する」という同社のビジョンに共鳴しての出資だという。
もはや、ベンチャー企業の資金調達においても、「共感」と「リスペクト」がお金の出し手と受け手との関係性を変えていく時代がきているのではないだろうか。そこで今回、高橋博之氏、一木典子氏(オレンジページ社代表取締役)、青井浩氏(丸井グループ代表取締役社長)の3者が、出資の背景やそれぞれの想いを語り合った。(取材・構成:高崎美智子)

なぜ、丸井グループとオレンジページは、ポケマルに出資したのか?

「食のC2C」ポケットマルシェに、オレンジページと丸井グループが出資した革新的な理由一木典子(いちぎ・のりこ)
株式会社オレンジページ代表取締役
1994年、JR東日本に入社。不動産、法務、グループ内の事業再編などの担当を経て、「東京感動線」プロジェクトリーダーを務めたのち、2019年6月より現職。2020年に新しいブランドPURPOSEを定め、ライフスタイルをイエナカまで贈り届けるメディアとして、時代が求める豊かな食体験の提供と社会課題の解決に挑戦している。ブラジル、大分、群馬、新潟、岩手、宮城に暮らしたほか、東京との2拠点生活の経験も長く、各地の食や人に魅了される。夫と2人の息子の4人家族。

高橋博之氏(以下、高橋)ポケットマルシェはスマホで生産者と消費者をつなぐ「食」のプラットフォームです。今回、オレンジページさんと、丸井グループさんという、まったく違う分野の会社から出資していただくことができ、そのご縁でこの鼎談が実現しました。そもそも、なぜオレンジページさんと丸井さんはポケットマルシェへの出資を決めたのでしょうか?

一木典子氏(以下、一木)一次産業は生きるうえで不可欠なもので、すべての生活者が当事者です。地域の暮らしの意味や物語を豊かな体験価値として都市の生活者に提供する場合、「食」は五感に訴求できるパワフルなコンテンツだと思います。だから、「食」×「メディア」に強みを持つオレンジページとして、一次産業のあるべき未来をともにつくりたい。それがポケットマルシェに出資を決めた理由です。高橋さんはブレないし、ビジョン・ドリブンな人ですから。1社ではできることに限界があるけれど、高橋さんや出資されたみなさんとタッグを組めば、成し遂げたいことが実現できると思います。

青井浩氏(以下、青井)昨年、私は社会起業家のイベントで、御社のCOOの山口幹生さんに、ポケットマルシェの取り組みをうかがいました。とても感動して、ぜひ協業したいと思ったのが出資のきっかけです。

高橋うちのCOOがきっかけをつくったんですね。ポケットマルシェというサービスのどんなところが面白いと思ったのですか?

青井当社は4年前からベンチャー投資を始めましたが、大事なテーマのひとつが「D2C(Direct to Consumer)」です。自分たちが発信するSNSなどのメディアやインターネットを通じて、お客様と対話しながら、コミュニティをつくっていく。消費者と直接つながる販売形態こそ、私たちが今後めざしたい小売りのかたちや、お客様との関係性のあるべき姿だと感じます

 私たちはお客様と一緒にお店や商品やサービスを開発しています。特に要望が多いのが飲食で、お客様がすごく盛り上がるんですね。ポケットマルシェは、まさに「食」の分野における「D2C」ビジネスでもあります。新たに出資・協業することでビジネスの領域を広げて、飲食でもお客様と直接つながる新たな関係性をつくりたい。そういう想いがあります。

高橋僕は丸井さんの「共創経営レポート」を読んだとき、冒頭に「この指とーまれ!」と書いてあって驚きました。僕自身、政治家の頃も、ポケットマルシェの事業を始めてからも、ビジョンを明確に掲げて、共感する人はみんな「この指とまれ」というスタンスですから。僕たちは常々、ビジョンや想いを共有できる人たちとともに事業をつくりたいと思っています。お二人に共感していただき、こうして協業へと至ったのは本当に嬉しいですね。

「食のC2C」ポケットマルシェに、オレンジページと丸井グループが出資した革新的な理由一木氏と高橋氏