ECB(欧州中央銀行)の国債購入決定に引き続いて、FRB(アメリカ連邦準備制度理事会)が、金融緩和措置の第3弾であるQE3(Quantitative Easing program 3)に踏み切った。

 今回は、住宅担保証券化商品MBSを、月額400億ドルのペースで購入するとしている。

 今回の緩和措置の背中を押したのは、雇用情勢が改善しなかったことだ(8月の雇用統計で、非農業部門の就業者数が前月比9万6000人増にとどまり、市場予想の13万人を大幅に下回った)。注目されるのは、「労働市場の先行きに十分な改善が見られるまで、適切な手段を取る」とされたことだ。QE2では物価上昇率が問題とされたが、今度は「雇用」という実体経済の指標が目標にされたことになる。

 しかし、この目標は達成できないだろうと考えられている。バーナンキFRB議長自身も、「金融政策は万能でない」と認めている。

 以下で述べるように、アメリカの雇用が伸びず、賃金所得が増えていないのは事実である。しかし、それは、新興国の工業化という構造的要因によると考えられる。だから、金融政策で解決できないのは当然だ。そして、これまで本連載で述べてきたように、金融緩和は世界的な投機資金の流れを引き起こし、世界経済に混乱をもたらすことになるだろう。

全世界的な金融緩和競争が起きている

 緩和の影響は、まず為替レートに明確に現われる。前回述べたようにECBの南欧支援策はユーロ安誘因なので、結局、ユーロ安、ドル安の圧力が働く。つまり、円高がさらに進行する。この結果、日本でも金融緩和圧力が強まるだろう。前回述べたように、為替レート競争が起こるわけだ。