テスラは中国市場では「一人勝ち」の状態テスラは中国市場では「一人勝ち」の状態 Photo:China News Service/gettyimages

テスラの成長期待が
高まっている

 新型コロナウイルスの感染拡大などもあり、世界の自動車産業は依然として厳しい状況にある。自動車産業が経済の大黒柱の地位を占める日独では、雇用の先行きにも不透明要因がある。そうした状況下、EV(電気自動車)の有力メーカーであるテスラの成長期待が高まっている。3月中旬、80ドル台に下落した同社株は8月下旬に500ドル程度まで大きく上昇し、時価総額はわが国の乗用車メーカー7社の合計を上回った。中国を中心に「モデル3」がヒットし、テスラが将来、世界の自動車産業の覇者になるとの期待をもつ投資家もいるようだ。

 ただ、現在のテスラの販売実績や財務力などを考えると、同社がフォルクスワーゲンやトヨタなど主要メーカーを凌駕する経営体力があるとは考えにくい。株価上昇のかなりの部分が、成長への過度な期待によるものといえる。今後、テスラ株が上昇し続けることもあり得ない。テスラの実態を冷静に考える必要がある。それは、とりもなおさず今後の自動車産業の展開を考えることにもつながる。

 わが国経済にとって自動車産業は成長の屋台骨だ。トヨタ自動車など自動車各社は、技術力を結集してテスラを上回る新しい自動車を世界に提示し、需要を創造しなければならない。重要なことは、これまでにはない高付加価値型の自動車を生み出し、そのヒットを実現することだ。トヨタのプリウスなどに代表されるハイブリッドカーを上回る環境性能や運転する歓び、より良い安全性能などを実感できる自動車の創造が、IT化の遅れが深刻なわが国経済の将来を左右するだろう。