大仏と鹿だけ?魅力度ランキング7位なのに敬遠される奈良の問題とは修学旅行を中心に観光客が戻りつつある奈良公園(著者撮影、以下全て同)

民間調査会社のブランド総合研究所が10月14日に発表した「2020年都道府県の魅力度ランキング」。茨城県が8年ぶりに最下位を脱したことが話題を集めたが、その結果に密かに胸をなで下ろした県がある。今回のランキングでは7位だった奈良県だ。魅力度では2009年から常に5~7位を維持し、安定したポジションにある奈良だが、実はある調査ランキングでは45位と低迷していた。観光地としては不本意な結果だったため、SNS上では県民たちの嘆く声が相次いだが、そこにはコロナ禍によってあぶり出された奈良観光の本質的な問題が隠れていた。(フリーライター 橋長初代)

奈良には「自然」と「食」のイメージがない

 ある調査とは、9月に発表された「コロナ後に観光で行きたい都道府県ランキング」だ。京都が3位、大阪が4位だった一方で奈良は45位。奈良県民が多くフォローしているFacebookのとあるページ上では「奈良の本当の良さを知らないだけでしょ」「わからない人は来なくてもいい」「交通の便の差だと思う」「奈良の近くにあることで京都と大阪の魅力度があがっている」「気にしなくていい」など、地元愛の強い奈良県民から負け惜しみとも思えるコメントが寄せられた。奈良で生まれ育った筆者も、人気の観光地だと思っていた奈良が45位だったことが衝撃で正直、合点がいかなかった。

 事実、47都道府県と国内1000の市区町村を対象に、認知度や魅力度、イメージなど全84項目からなる「地域ブランド調査2020」では、奈良に対する「観光意欲度」は全国4位にランクイン。2つの調査結果には大きな隔たりがある。

 その理由について、ブランド総合研究所の田中章雄社長は「やはりコロナ禍が大きく影響している。奈良観光の中心は神社仏閣なので、屋内で3密になることに対する不安があるのでは。コロナ後に一番行きたいのは、温泉と自然が豊かな所。奈良にはどちらのイメージがないことも影響した」と分析する。