半径50センチの課題解決!小6シンジくんの「席替え」アプリが示す新しい学びプログラミングを通じ、楽しみながら21世紀を生き抜く力を養うライフイズテックのカリキュラム。これまでに累計約5万2000人の中高生が参加した 写真提供:ライフイズテック

2020年から小学校でプログラミング教育が始まった。21世紀を生きる子どもたちにとって、情報通信技術(ICT)は必須のリテラシーであり、人工知能(AI)の時代にはますます欠かせない知識となる。中高生を主体に新しい学びを提案しているライフイズテックの讃井康智さんと共に20年先の社会を見据え、いま子どもたちに必要な教育の在り方について見ていこう。(ダイヤモンド社教育情報)

中高生がITでものづくりする時代

 まずは簡単な自己紹介から始めましょう。私、讃井(さぬい)康智は福岡市に生まれました。まだ小学生だった1989(平成元)年にアジア太平洋博覧会(よかトピア)が開かれ、跡地には福岡ドームができるという具合に街はどんどん発展していきました。

 しかし、それ以上に私が目を見張ったのは、21世紀に差し掛かろうとする頃に起こったIT(情報技術)による社会の一大変化です。小6の夏に「Windows95」が発売されました。中学生の時にはインターネットが急速に普及、高校生になった私は、パソコンを使ったゲーム作りやメディアアートの世界に強い憧れを抱くようになりました。

 ところが当時の福岡では、プログラミングなどITを学ぶ場所はまったくなく、どこでソフトウエアを手に入れたらいいのかも皆目見当がつきませんでした。そのため、いったんはその憧れを封印してしまいます。

 それから10年後、東京で社会人になった私はある勉強会で出会った水野雄介(現・ライフイズテックCEO)と同じ問題で共感し合います。「2010年の今でも、中高生がITを学べる場所がない」という問題です。2010年の日本は、広くインターネットが普及し、iPhone発売から3年がたってスマホも普及し始め、IT企業の躍進が広く認識されていた時代です。しかし、その時代にIT業界で時計の針が10年以上止まったままになっていたのがIT教育の分野でした。

「これでは私の高校時代と同じ。ITを学びたい子どもたちが増えたこの時代にそんなことがあってはならない」

 そんな思いから中高生がプログラミングをはじめとしたITを学ぶ場を自分たちで作ろうということでライフイズテックを設立しました。

 会社設立から10年、2020年からは小学校でもプログラミング教育が始まりました。21世紀生まれで、最初からインターネット環境が存在する彼らには、いまの親世代にはないIT活用の高い潜在能力があります。

 そんな彼らの能力がいまから10年、20年後に生かされるよう、私たちが創業時から掲げてきたのが「中高生20万人がITでものづくりをする社会をつくる」という目標です。これまで10年間の活動の中で見えてきたことがたくさんあります。私自身、小学生の子どもの親でもあります。その知見を共有しながら、みなさんと一緒に「21世紀に生きる子どもたちの教育」の在り方について考えていきたいと思います。