トヨタ生産方式の特徴であり強みは、「ムダの意味」を把握し「ムダの排除」に徹底したことだ。大野耐一は「七つのムダ」に分類した。1.つくり過ぎのムダ、2.手待ちのムダ、3.運搬のムダ、4.加工そのもののムダ、5.在庫のムダ、6.動作のムダ、7.不良品をつくるムダ。
トヨタ生産方式は、ムダを浮き彫りにして、その絶滅をねらったシステムなのである。

「ムダ」を排除して「構造」を変革する

「トヨタ生産方式は構造を変革する最良の手段」である。大野耐一が繰り返し説明するように、「徹底的なムダの排除」によって「利益の出る仕組み」、すなわち「収益性の高い組織構造」を創り出すのが目的である。

 トヨタ生産方式が規定する「七つのムダ」は、最良の「人間の知恵」であり「暗黙知」である。「構造変革」と「コストダウン」の標的となる。こつこつとムダを永続的に撲滅しなければ、効果は上がらない。

「ムダは無限にある」「ムダを排除するとコストは下がる」「コストダウンは無限である」「利益は無限である」

 その過程で「利益の出る仕組み」が構築され、組織全体の「構造」が変わる。家庭も企業も国家も同じである。

 禅問答のようだが、大野耐一の思想(言葉)は永続性、無限性に支えられているところがある。考えさせ行動させる。それを持続させる不思議な力である。