こんまりプロデューサーが推奨! 過去を手放して軽やかに生きる道

雑誌「TIME」による「世界で最も影響力がある100人」に、片づけコンサルタント「こんまり」こと近藤麻理恵さんが選ばれたのは2015年のこと。その前から、彼女のマネジメントを担当し、「こんまりメソッド」の世界展開をプロデュースしたパートナー、川原卓巳さんの初著書が発売された。タイトルは『Be Yourself』。本書は、麻理恵さんと川原さんがどのように「こんまり」をプロデュースしてきたのかを振り返り、誰もが応用できる再現性のあるメソッドにした「セルフプロデュースの教科書」だ。
変わりたくても変われない人、ストレスフルな人間関係にうんざりしている人、今の環境に全く満足できない人……。どんな悩みを持つ人も、「自分の中にある才能を引き出せば、ありのままの姿で輝き出す」ことができると確信を持って伝える川原さん。その理由について、率直な疑問をぶつけてみた。全4回インタビューの2回目は、『Be Yourself』にあるセルフプロデュースを実践し、過去を手放したことで、自分らしい輝きを取り戻した2人の男女の例について話を聞いた。(取材・構成/樺山美夏、撮影/Ogata)

「残すか、手放すか」を繰り返し考えて
人生を片づける

――『Be Yourself』では自分らしく生きる第一歩として「残すか、手放すか」の決断を繰り返す「片づけ」をすすめています。「片づけ」というと女性が関心を持つものと思われやすいですが、ストレスが多い男性こそ「人生の片づけ」が必要かもしれません。

川原卓巳(以下、川原):本当にそう思います。日本はつらそうな顔をして歩いている男性が多いですよね。一方で、レストランなどで楽しそうに話しをしているのはほとんど女性で、みんな生き生きしています。

――レストランもファッションビルも観光地も女性だらけで、経済は女性が回しているんだなと感じます。

川原:おっしゃる通り。だから、僕がイメージしているこの本の読者は、社会や会社のルールに縛られて、本来の自分の良さを活かしきれていない人です。現状に違和感を感じているのに、ほかの選択肢を選べずにいる人。そして何より、昔の僕のように特別な才能もなく、何者にもなれず、何か行動しても大した成果を出せないと悩んでいる人です。

 たとえば、僕の会社員時代の後輩がそう。彼は10年間ほど人材教育コンサルティングの仕事に携わって、トップクラスの成果を出し続け、100回以上表彰された会社の宝でした。でも彼はプライベートの時間を優先したり、イエスマンでいることを嫌ったりと、組織の中ではマネジメントしづらい社員だったようです。本人も「こんな生き方でいいのか……」と悩んでいたところで、縁があって僕と彼は再会し、たくさん話をしました。そして彼は、自分の意志で会社を辞めて自分らしく生きることを決めたといいます。まさに「Be Yourself」の体現者、第一号ですね。

こんまりプロデューサーが推奨! 過去を手放して軽やかに生きる道川原卓巳(かわはら・たくみ)
KonMari Media,Inc Founder and CEO/Producer
1984年広島県生口島生まれ。大学卒業後、人材教育系の会社に入社し、のべ5000人以上のビジネスパーソンのキャリアコンサルティングや、企業向けのビジネス構築・人材戦略を行う。近藤麻理恵とは学生時代からの友人であり、2013年以降は公私共にパートナーとして、彼女のマネジメントとこんまりメソッドの世界展開のプロデュースを務める。2016年アメリカ移住後、シリコンバレーとハリウッドの両方に拠点を置きながら、KonMariのブランド構築とマーケティングを実施。日本のコンテンツの海外展開なども手がける。2019年に公開されたNetflixオリジナルTVシリーズ「Tidying Up with Marie Kondo」のエグゼクティブプロデューサーでもある。同番組はエミー賞2部門にノミネートされた。

――人材価値が高い人ほど、いったん決めたら行動が早そうです。

川原:会社を辞める前の彼は、クルマにたとえるなら、もっと速く走れる性能があるのに、アクセルを踏みながら同時にサイドブレーキも引いているような状態でした。だからエンジンから煙が出ていた。それがついに、自分の意志でサイドブレーキを解除した。すると、アクセルを踏む力は以前と同じなのにサイドブレーキがなくなったぶん、意思決定のスピードが早くなったそうです。「やりたくないことは手放していいんだと自分に許可を出せたから、前に踏み出せた」と彼は言っていました。

――がんばる人ほど過去を手放すことが怖くなるんでしょうか。

川原:そうですね。『Be Yourself』にも書いたように、会社に求められることをがんばった人ほど、本来の自分に戻るときに手放さなければいけないものが多いと思っているようです。会社を辞めたら、自分がこれまで培ってきたものがすべて失われるのではないか、と。

 実際に僕も、会社を辞める時には営業職でお付き合いしていた1000人以上のお客様を手放しました。ただそれでも、これまで積み重ねてきたことがゼロにはなりませんでした。むしろ辞めてから、会社員時代の経験が自分の血肉になっていると実感できたんです。だから、過去の蓄積を活かして、次は自分のために生きようと思えました。