コロナ時代を乗り切るために、早稲アカが選択した「原点回帰」「早稲アカDUAL」で、6月からは全員が“二刀流”となった早稲田アカデミーの先生 写真提供:早稲田アカデミー

分散・時差登校が再開した2020年6月から、塾でも対面授業が行われるようになった。しかし、早稲田アカデミーではこの時に始めたZoom授業との“二刀流”を今も続けている。海外展開も含め、今後の経営方針について、森上展安・森上教育研究所代表が尋ねた。(ダイヤモンド社教育情報、撮影/平野晋子)

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山本豊 早稲田アカデミー代表取締役社長

山本豊(やまもと・ゆたか) 早稲田アカデミー代表取締役社長

1963年長野県生まれ。87年早稲田大学卒。学生時代からアルバイト講師を務めた早稲田アカデミーに入社。91年、入社4年目で最大の生徒数を誇る旗艦校「早稲田校」校長に抜擢される。97年運営部長に就いたことを皮切りに、主として運営畑を歩き、2003年取締役運営部長、16年常務取締役運営本部長、19年専務取締役運営本部長兼営業戦略部長を経て、20年3月より現職。
 

コロナ禍で変わった塾の授業風景

コロナ時代を乗り切るために、早稲アカが選択した「原点回帰」[聞き手]森上展安・森上教育研究所代表

――その後、生徒は増えましたか。

山本 6月に緊急事態宣言が解除されて、そこからお問い合わせが増え、3~4月に入塾しようと思っていて控えていた方々が、改めて塾に行かなければと手続きをしていただけるようになり、6~8月はかなり順調に新規の手続きをいただき、生徒も増えていきました。

 5月に政府が緊急事態宣言を解除することになってから、このままZoomを続けるのか、6月から対面に切り替えるのか、そこの判断は非常に大きかったですね。他の塾、例えば四谷大塚さんやSAPIXさんは100%対面に切り替えておられたと思います。

 生徒・保護者の皆さんに最大限寄り添ってそのニーズに応えるという大方針を徹底するため、5月にWebアンケートを取ったところ、大変多くのご回答をいただきました。驚いたことに、「即座に対面での授業の再開を希望する」という答えが35%しかなく、「しばらくはZoom」が43%、「当面はZoom」が18%という割合でした。

――意外な感じもしますね。

山本 このアンケートの結果に、とても悩みましたが、「よし!両方やろう」と、そこで大きな決断をしました。「早稲アカDUAL」と称して、対面と双方向、両方の授業をやります、デュアル方式でやりますと。

――デュアルということは、対面の人は対面で、ということですか。

山本 対面を希望する方には、従来通り校舎に来ていただいて授業をします。一方、Zoomを希望する方には、対面の授業が実施されている教室の中に設置したタブレットを通して授業をするという、スタイルなんです。

 授業を担当する先生たちには、「6月からは“二刀流”だから」と。

 対面の授業をしつつ、並行してタブレットの操作もして自宅で受講している生徒たちにも気を配る……というのは、先生たちにかなり大きな負担を強いることになってしまったのですが、皆が快く協力してくれたことで成り立つようになりました。

 すべての校舎、すべての教室でタブレットが使えるようにWi-Fi環境を整備したり、タブレット用のスタンドや電源コードを用意したりと、短期間での準備はとても大変でしたが、保護者の皆さんにご安心いただける選択肢を用意できたことは、良かったと思います。