ツイッターフォロワー数は50万人、月間2000万PVの漫画ブログを運営と、レジェンド級の記録を叩き出している売れっ子Web漫画家・やしろあずき氏。現在はインターネットで漫画を更新しつつ、複数の会社役員をつとめるなど、多方面で活躍を見せている。
現在は月収500万円を超えることもあるというやしろ氏の成功法則は……なんと徹底的に「逃げる」こと! 向いていないことや苦手なことから徹底的に逃げ続けてきた結果、漫画家という職業にたどり着いたという。そんな彼の常識破りな人生論が濃縮された1冊『人生から「逃げる」コマンドを封印している人へ』が12月9日に発売となった。
これを記念し、今回はやしろ氏に「自分だけの才能」を見つける方法について、聞いてみた。(取材・構成/川代紗生、撮影/疋田千里)

「自分には何が向いているんだろう?」と思う人に“突然月収500万”になった僕が伝えたいこと

双方「WIN-WINの形でクビ」になった過去

──「就職したなら、とりあえずキツくても3年は頑張れ」みたいな風潮あるじゃないですか。私も途中で辞めちゃったクチで、「あー逃げちゃったな……私ダメ人間やな……」みたいに落ち込むこと結構あったんですけど。やしろさんは、本のなかで徹底的に「嫌いなこと・苦手なことから逃げる」ことを推奨されていましたよね。

やしろあずき(以下、やしろ) いやー、あんなもんクソ食らえですよ。3年どころか3秒で辞めたっていいと思います。僕なんて、これまでの人生で「不向き」なことからは徹底して逃げ続けてますからね。その結果、自分に一番向いている「漫画家」という職業にたどり着いたんです。

──自分に向いているのは「漫画家だ!」という結論にいたるまで、どういうルートを辿ったんですか?

やしろ 学生時代からとにかく逃げまくってました。まず就活が嫌すぎたんですよね。とくに集団面接が大嫌いで。次は集団面接です、となった瞬間にその会社受けるの辞めたんですよね。

──極端すぎる!

やしろ まあ、就活からは逃げてたんですけど、たまたま応募したゲーム企画コンテストがきっかけでゲーム会社に内定をもらえて、プランナーとして働き始めました。ゲーム制作自体は楽しかったんですけど、「新人は朝早く来てトイレ掃除をしろ!」と言われて。あとは電話番とか、あまり企画の仕事とは関係のないことをやらされて。それで、会社に行かなかったらクビになるかな? と思って行かないでいたら、本当にクビになったんですよ!

──え……? 会社に行かな……え?

やしろ そしたらクビになって、「やったー!」と思って、もう意気揚々と「辞めます」って言ったら、「クビ宣告されて、そんなに笑顔でいられるのお前だけだよ」って言われましたね。というわけで、実にWIN-WINの形でクビになることができました。

──(「WIN-WINの形でクビ」というパワーワードに、言葉を失う取材班)

「自分には何が向いているんだろう?」と思う人に“突然月収500万”になった僕が伝えたいことやしろあずき
WEB漫画家 livedoor公式ブロガーとして月間2000万PVの漫画ブログを運営。 母親に「人に迷惑をかけなければ大概のことはOK」と育てられたため、きわめて自由な大人になる。就活に嫌気がさしてきた頃、たまたま応募したゲーム企画コンテストでベストアマ賞を受賞。それによりゲームプランナーとなるが半年で退社。その後、大手ゲーム会社に転職するが自分の意思に関係なく働かねばならない会社員の働き方が劇的に合わず、仕事の傍ら趣味で続けていたインターネットへの漫画投稿の収益が本業の給料を抜いたことで手応えを感じフリーランスになる。2015年Twitterに投稿した「スタバで見た小学生達の話」がこの年最もリツイートされた日本語アカウントランキング第4位にランクイン。一躍有名になる。以降、様々な連載、企業漫画を執筆しつつ2018年、株式会社グランツアセット執行役員就任。2019年漫画事業・工事用品レンタル事業を法人化し、代表取締役となった。著書に『人生から「逃げる」コマンドを封印している人へ』(ダイヤモンド社)がある。
Twitter:@yashi09
ブログ:http://yashiroazuki.blog.jp/

苦手なことから逃げ続けて漫画家になった

やしろ それから、2社目は大手のゲーム会社「SEGA」に入って、企画の仕事もやらせてもらえて楽しく働いていたんですが、ただ、やっぱり大きな会社組織だと、自分がつくりたいものを100つくることはできないんですよね。チームで動かなくちゃいけないし、プロデューサーも株主もディベロッパーもいる。自分がつくりたいと思うものを思う存分つくれるようになるには、40歳、50歳くらいまで粘って頑張って出世しないといけない。

 あと、僕は壊滅的に会社員に向いていませんでした。朝起きて同じ時間に出社するのがどうしても苦手だったんです。いい会社だったからこそ、ここでダメなら会社員は無理だと思って、フリーランスになることを決めました。副業として漫画を書いたりはしていて、「副業月収がSEGAの月収を上回ったら辞めよう」と思っていたので、そこでふんぎりをつけました。

──さすが! そこはきちんとラインを設けられていたんですね。

やしろ まあ、SEGA時代、最後のほうは仕事全然やらないで会社で漫画描いてたら、給料下げられましたけどね。仕事せずに1日8時間、全力で漫画描いたりしてましたから。でも、正社員の給料が下がったおかげで副業収入がひょいっと上回ったんですよ! それで「よっしゃー超えた!」ってばっと辞めましたね。

──(ふたたび言葉を失う取材班)

やしろ 結局、苦手なことから逃げまくったおかげで今の漫画家という仕事にたどり着いたんですよ。だから、嫌いな仕事をしているのに「せっかく新卒で入ったから……」といって無理に続けて心身を壊している人とかを見ると、「逃げる」コマンドを表示させてみてもいいのになあ、と思うんです。