ツイッターフォロワー数は50万人、月間2000万PVの漫画ブログを運営と、レジェンド級の記録を叩き出している売れっ子Web漫画家・やしろあずき氏。現在はインターネットで漫画を更新しつつ、複数の会社役員をつとめるなど、多方面で活躍を見せている。
現在は月収500万円を超えることもあるというやしろ氏の成功法則は……なんと徹底的に「逃げる」こと! 向いていないことや苦手なことから徹底的に逃げ続けてきた結果、漫画家という職業にたどり着いたという。そんな彼の常識破りな人生論が濃縮された1冊『人生から「逃げる」コマンドを封印している人へ』が12月9日に発売となった。
これを記念し、今回はやしろ氏に「SNS戦略」について、聞いてみた。(取材・構成/川代紗生、撮影/疋田千里)

世界一になったのに、どん底を味わった僕がみつけた「SNSの法則」

どんなネタでも「人を傷つけない」ことを意識する

──やしろさんはフォロワーを増やすために、どんな工夫をされていましたか?

やしろあずき(以下、やしろ) 最初は戦略的に、めちゃくちゃ考えて更新していました。フォロワーが少ないときには、やっぱり人を集めないといけないので、時事ネタにうまく絡めたり、Twitterのトレンド上位に入っているワードから連想して漫画を描いたり。自分のツイートを分析して、何時に更新すると見てもらいやすいとか、研究もしていました。今はそれをしなくても、ある程度安定して見てくれる方がいるので、好きに書けるようになりましたけどね。

──Twitterでは、どんなコンテンツがヒットしやすいですか?

やしろ どんなネタでも「人を絶対に傷つけない」ということと、「結局、最後に泣くのは僕」っていう着地にするのは心がけています。たとえば、Amazonの「欲しいものリスト」にふざけて三角コーンを入れておいたら、誕生日に三角コーンが大量に送られてきて。でも、それも「僕の自宅が三角コーンまみれになる」っていうネタとしてウケたからよかった(笑)。今じゃなぜか「三角コーン=やしろあずき」みたいな狂ったブランディングが完成しちゃってますけど、盲導犬協会や消防団に大量の三角コーンを寄贈して、社会貢献にもなってますからね。

世界一になったのに、どん底を味わった僕がみつけた「SNSの法則」やしろあずき
WEB漫画家 livedoor公式ブロガーとして月間2000万PVの漫画ブログを運営。母親に「人に迷惑をかけなければ大概のことはOK」と育てられたため、きわめて自由な大人になる。就活に嫌気がさしてきた頃、たまたま応募したゲーム企画コンテストでベストアマ賞を受賞。それによりゲームプランナーとなるが半年で退社。その後、大手ゲーム会社に転職するが自分の意思に関係なく働かねばならない会社員の働き方が劇的に合わず、仕事の傍ら趣味で続けていたインターネットへの漫画投稿の収益が本業の給料を抜いたことで手応えを感じフリーランスになる。2015年Twitterに投稿した「スタバで見た小学生達の話」がこの年最もリツイートされた日本語アカウントランキング第4位にランクイン。一躍有名になる。以降、様々な連載、企業漫画を執筆しつつ2018年、株式会社グランツアセット執行役員就任。2019年漫画事業・工事用品レンタル事業を法人化し、代表取締役となった。著書に『人生から「逃げる」コマンドを封印している人へ』(ダイヤモンド社)がある。
Twitter:@yashi09
ブログ:http://yashiroazuki.blog.jp/

世界一になった僕が、あっという間に輝きを失った話

──今は、インスタグラムとTwitterと、それぞれ使い分けされていますか?

やしろ まず、男女比から言うと、インスタは女性のほうが圧倒的に多いですね。Twitterは、ちょっと男性が多いかな、くらい。インスタは、主婦の方やお母さんが多いので、子育てネタや、僕の母ネタがウケている印象です。

 Twitterは、いい意味で頭が悪いですね。もう「うんちぶりぶり」みたいなのがウケるんですよ。あと、フォロワーのリプライがネタになったりとか、漫画を読んでくれている読者を巻き込みやすいツールではあるので、発信の方法はインスタとは使い分けていますね。

──複数のツールを使い分けするようになったきっかけは何だったんでしょうか?

やしろ そもそも、僕のフォロワーが一番伸びたのって、「Vine」というショート形式の動画共有サービスだったんですよ。一時期すごく流行っていたんですけど、6秒の動画を投稿できる、っていうやつ。「人形遊びをしていたら母に見つかる」という動画を投稿したら、あっという間に拡散されて、それがなんと世界一の再生数を獲得してしまって。

 おかげでフォロワー数もぐんぐん伸びて、「Vine」というサービスのなかではかなりの有名人になっていたんですよね。ただ、ある日突然「Vine」がサービス終了して。当時、Twitterもやっていたので僕自身はなんとかなったんですが、「Vine」に全振りしていた人たちは、サービス終了してから慌てて他のサービスに乗り換えて、以前ほどの人気を失ってしまった……なんて場面を目にしたんです。そういうときに、一つのツールに固執して活動する恐ろしさを痛感しました。

 このことがあってから、僕は常日頃からリスクヘッジをして、一つの島だけ育てるのではなく、複数の島を育て、いつメインの仕事がなくなっても大丈夫なように仕組みをつくっています。

 インスタを最近やりはじめたのも、実はそういう理由です。やっぱりTwitterだって、いつなくなってもおかしくないし。YouTubeも、今年になってやり始めました。特にフリーランスとして活動する人は、気をつけないといけないポイントかなと思います。調子がいいときほどリスクヘッジする」を心がけてますね。