上級国民写真はイメージです Photo:PIXTA

東京地検特捜部は15日、農相在任中に業者から現金500万円の賄賂を受領したとして、収賄罪で吉川貴盛被告(70)(※「吉」は正式には上が「士」でなく「土」、以下同じ)を在宅起訴した。しかし「逮捕・起訴」という手続きではなかったため、SNSなどインターネット上には「また出た、上級国民への忖度(そんたく)」「逮捕されないのは池袋暴走事故と同じ理由」などと批判する投稿が相次いだ。では、逮捕しなかったのは本当に「上級国民への忖度(そんたく)」なのだろうか。(事件ジャーナリスト 戸田一法)

元農相が現金受領し業界に便宜

 吉川被告を巡る汚職事件の概略は以下の通りだ。

 起訴状によると、吉川被告は家畜を快適な環境で飼育する「アニマルウェルフェア(AW)」の国際基準に反対する意見を取りまとめるなど、業界への便宜を図ってもらいたいという趣旨と知りながら、2018年11月21日に東京都内のホテルで200万円、19年3月26日と同8月2日に大臣室でそれぞれ200万円と100万円を鶏卵生産大手「アキタフーズ」(広島県福山市)グループの秋田善祺元代表(87)=贈賄罪で在宅起訴=から受け取ったとされる。

 AWとは「家畜を工業製品のように扱うこと」への批判から発生した英国発祥の理念で、公益社団法人「畜産技術協会」は「家畜の快適性に配慮した飼養管理」と定義。「動物福祉」と表現されるケースもある。