名医やトップドクターと呼ばれる医師、ゴッドハンド(神の手)を持つといわれる医師、患者から厚い信頼を寄せられる医師、その道を究めようとする医師を取材し、仕事ぶりや仕事哲学などを伝える。今回は第36回。「夜の街の守り神」として呼ばれ、性感染症のスペシャリストとして有名な尾上泰彦医師(性感染症専門医療機関「プライベートケアクリニック東京」院長)を紹介する。(医療ジャーナリスト 木原洋美)

風俗街で
100万人以上の患者を診てきた

尾上泰彦氏尾上泰彦(おのえ・やすひこ)/性感染症専門医療機関「プライベートケアクリニック東京」院長。日本性感染症学会(功労会員)、(財)性の健康医学財団(代議員)などを歴任、厚生労働省のHIV研究に協力するなど、日本における性感染症予防・治療を牽引している。

「そんな長くやるつもりはなかったのに、いつの間にか「川崎の守り神」と呼ばれるようになっていましたね」

 穏やかな笑顔で語るのは尾上泰彦医師。性感染症専門医療機関『プライベートケアクリニック東京』(東京都新宿区)の院長だ。

 御年76歳、医師歴52年。

 1981年、36歳の時に日本有数の風俗街である川崎の堀之内と南町に挟まれた地域に『宮本町中央診療所』を開業し、院長になった。

 以来、2017年に新宿に移るまでの37年間、多いときは日に140人もの患者を診察し、延べ100万人以上の性感染症患者と向き合ってきた。