コロナ禍で社会が大きく変化する中、自分自身のキャリアや将来を見通せず、不安を感じる人が増えています。近い未来さえ誰にも予測できない状況下で、特に悩んでいるのが管理職の方々ではないでしょうか。自分自身のキャリアのみならず、部下のキャリア開発についても考え直す必要性が生まれているためです。

過去の経験が役に立たなくなり、どう道筋をつくったらいいか悩んでしまう――。そんなときにおすすめしたいのがフレームワークの活用です。そして今回、混迷する時代のキャリア開発を考える上で紹介したいフレームワークが「キャリア・アンカー」です。

ビジネススクールを運営するグロービスの講師であり、動画学習サービス『GLOBIS 学び放題』の事業リーダーを務める鳥潟幸志氏が、部下、そして自分自身のキャリア形成とモチベーション管理に役立つキャリア・アンカーの活用法についてお伝えします。

どうしても犠牲にしたくない価値観を
明らかにするキャリア・アンカー

 キャリア・アンカーとは、「アンカー(錨)」の名の通り、仕事において個人が絶対に譲れない軸にしているものを指します。具体的には、個人が仕事を進める上でどうしても犠牲にしたくない価値観や欲求を明らかにし、個人のキャリアタイプを大きく以下の8つに分類したものです。

 1970年代後半から80年代前半にかけて米国の組織心理学者エドガー・シャインによって提唱されたこの考え方は、キャリア観が多様になった現代でも大いに活用することができます。むしろ情報が爆発的に増えて多くの道筋が示されている中、キャリア・アンカーを通じてセルフイメージを持つことは、自分の軸を定める上でより重要になっているといえるでしょう。

 ネット上にキャリア・アンカーの無料診断ツールがたくさんあるので、誰でも気軽に自分のタイプを知ることができます。自ら回答するのに加えて、同僚など自分のことをよく知っている人に自分のことを答えてもらうのもおすすめです。他者からの客観的な視点も非常に参考になります。