AWSとKDDIが国内初提携、5G環境による超低遅延データ処理を実現

KDDIとアマゾン ウェブ サービス(AWS)は2020年12月、KDDIの5G(第5世代移動通信システム)ネットワーク内にAWSのクラウドサービスを置き、5G通信機能の一つ「超低遅延」を具現化する「AWS Wavelength(ウェーブレングス)」の提供を開始した。5G時代の新ビジネス創出の可能性を大きく広げるこの新サービスがもたらすインパクトを、AWSジャパン執行役員技術統括本部長の岡嵜禎氏と、KDDI執行役員ソリューション事業本部サービス企画開発本部副本部長の丸田徹氏に聞いた。

5Gとモバイルエッジコンピューティングが広げる大きな可能性

――「AWS Wavelength」は、モバイルエッジコンピューティング(MEC)を実現するクラウドサービスだと伺っています。そもそもMECとは、どんな技術でしょうか。

岡嵜 モバイル端末やIoTデバイス、監視カメラ、センサーといったネットワークの「エッジ」(末端)側でデータを処理したり、アプリケーションを実行したりする分散コンピューティングのフレームワークがMECです。

 従来のデータ処理では、エッジ側から発信されたデータを最寄りの基地局が受信し、そこから幾つもの接続ポイントやインターネットを経由してシステムに到達するので、どうしても反応にタイムラグが生じてしまいます。例えば、製造現場のIoTセンサーが異常を検知しても、システムによる対処の指令が遅れ、製品の品質や納期に影響を及ぼすといった問題に結び付いていたのです。

 そこで近年、データが生成されるエッジに最も近い場所にサーバーやシステムを置き、送られてきたデータの処理結果や指令を瞬時に送り返す技術であるMECが確立され、活用が広がっています。

  AWS Wavelengthは、このMECの技術を活用し、通信会社が提供する通信ネットワーク内に、AWSが提供するクラウドサービスのインフラを構築するものです。数百万の顧客が利用しているAWSが、5Gネットワークの超低遅延環境で使えるのが最大の特長です。

――今回、KDDIとの提携で、5GネットワークとAWS Wavelengthの利点を掛け合わせた新サービスは、ユーザーにどのようなベネフィットをもたらすのでしょうか。

丸田 5Gの大きなメリットの一つは、超低遅延であることです。そのため、5Gネットワーク内におけるデータのやりとりのタイムラグはほぼ解消されますが、そこから先のネットワークが従来のままだと、そこがボトルネックとなり超低遅延のメリットが生かせません。

 KDDIとしては、5Gネットワークを提供するだけでなく、5Gの持ち味を企業の皆さまのDX(デジタルトランスフォーメーション)推進や社会課題の解決に存分に生かしていただきたいと思っています。そのためには、他のネットワークの影響を受けないように、5Gネットワーク内でデータのやりとりを完結させるMECのインフラが必要だと考え、世界のユーザーに最も選ばれているAWS様に声を掛けさせていただきました。

 4Gに比べて遅延が半分以下という5Gの特性と、世界中で数百万社、国内でも数十万社が利用するAWSという洗練されたクラウドサービスを掛け合わせれば、DXの可能性は大きく広がると確信しています。

KDDIの5Gネットワーク内にAWSのコンピューティングサービスとストレージサービスを配置することで、超低遅延の実現を可能にする
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――AWSは、米国でも5Gネットワーク環境でのAWS Wavelengthの提供を開始していますが、日本においてKDDIをパートナーに選んだ理由は何ですか。

岡嵜 KDDI様は2021年度末までに5G基地局を約5万局設置する計画を有しており、人口カバー率90%を目指すなど、普及に向けて積極的な投資を行っておられます。また、5G技術そのものだけではなく、社会課題の解決やユーザー企業のDX推進のため、応用技術やソリューションの開発にも積極的に取り組んでおられる点に共感を覚えました。

 AWSも、5GとMECを組み合わせることで、ユーザーの皆さまにより多くのイノベーションの機会をご提供したいと考えています。その思いが一致したことが、今回の提携の大きな決め手になったと思います。

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