首都圏「中学受験」、異例尽くしの2021年を総括2021年中学校開校の広尾学園小石川は、姉妹校である広尾学園との相乗効果で順調な滑り出しに 

埼玉県での入試が始まる前々日に緊急事態宣言が再度発令され、新型コロナウイルス禍の最中に行われた2021年中学入試。首都圏では感染リスク回避のため、都県境を越えての受験や併願校数の減少といった現象も見られた。異例尽くしだった今年の入試を振り返ってみよう。(ダイヤモンド社教育情報)

2021年入試のキーワード

 2020年春、新型コロナウイルスのまん延で一斉休校を余儀なくされていた頃、中小の塾は生徒数の減少に直面していた。経済状況も悪化する中、2021年の中学入試は志願者が減少するのではないかと危ぶまれた。

 秋の大手四模試の志願者動向などを見ると全般的に減少傾向で、とりわけ難関校は1割程度の出願者減が予想された。年が明け、1月8日に緊急事態宣言が発令されたことで、受験生の不安が増し、その志願動向がさらに読めなくなった。「密」の回避は、さまざまな局面で発現している。

 東京・神奈川の入試が一段落した現時点で、2021年の首都圏入試状況を振り返ってみたい。今年の入試のキーワードとなるのは、実倍率、所在地、中堅校である。

 昨年10月の大手四模試での志願状況を基に人気校と穴場校を見た記事で、受験生の数は2020年並みとなりそうと指摘した上で、3つの傾向に触れている。安全志向、日本大学の正付属・準付属校の人気、(都県境である)川を越えない傾向である。これらは実際の入試でもおおむねその通りとなった。

 その後、11月の模試12月の模試と志願状況を見ていった。例年ならば11月模試の段階から大きく変わることはないのだが、2021年は入試日直前まで動きがあった。それだけ受験生も保護者もギリギリの段階まで悩み抜いたことがうかがえる。

「川を越えない傾向」を最も顕著に感じさせたのが千葉の渋谷教育学園幕張(渋幕)である。1月22日実施の1回は、予想では男女共に2割程度の出願者減だったが、結果は男子19%減、女子15%減で、実倍率(2020年比増減)は男子2.3倍(0.8ポイント減)、女子2.8倍(0.9ポイント減)といずれも3倍を割れた。実倍率3倍超の入試が敬遠される2021年の傾向も、この“渋幕ショック”がすでに示していた。これは「安全志向」を示すものでもある。

 事前予想が軒並み出願者1割減だった最難関の東京男女御三家は結果が分かれた。男子は、開成が2%減、武蔵が3%減にとどめたものの、麻布は13%減と大きく減らした。女子は女子学院9%減、雙葉8%減に対して桜蔭が5%増と分かれた。それはなぜなのだろうか。

 2021年と2020年で実倍率の変化を見ると、女子は女子学院が2.7倍で前年比0.3ポイント減、雙葉は3.1倍で同0.1ポイント減なのに対して、桜蔭は2.0倍で同0.2ポイント増となっている。付属小学校からの内部進学枠があり、中学での募集人員が少ない雙葉の倍率が高止まりなのは仕方ない。桜蔭の場合はこれまで実倍率が低すぎたからといえそうだ。ちなみに、いずれの学校でも面接は行わなかったが、桜蔭は口頭で聞いていたことを書面で尋ねたそうで、内容的には変わりなかったようである。