中国経済の減速によって
牽引役を失った世界経済の行方

 つい最近まで世界経済の牽引役を果たしてきた、BRICs経済の減速が鮮明になっている。特に、リーマンショック以降、中国経済の減速が顕著になっており、世界経済は牽引役を失ったことになる。

 過去の世界経済の動きを振り返ると、2000年代初頭以降、大規模な不動産バブルの発生によって好調な展開を示していた欧米経済が、世界を引っ張っていた。

 ところが、その不動産バブルが崩壊し、2008年にリーマンショックが発生して以降、欧米に代わって中国をはじめとするBRICs諸国が世界経済を引っ張ってきた。

 その中国の経済を下支えしていたのが、総額4兆元に上る大規模な経済対策だった。しかし、その経済対策の効果が永久に続くことはない。今年前半、その効果が薄れたことに加えて、中国の最大の輸出先である欧州経済の減速が一段と鮮明化したことで、中国経済の足取りが一気に怪しくなった。

 中国経済が減速すると、オーストラリアやブラジル、さらにはインドなどの経済にもマイナスの効果が波及する。その結果、BRICs諸国の経済にもブレーキがかかっている。

 また、BRICs諸国がそれぞれ個別の問題点を抱えているのも気がかりだ。中国はリーダー交代に伴う政治情勢の不安定化、ブラジルは鉄鉱石の中国向け輸出の減速、ロシアはシェールガス開発に伴うエネルギー需要の減退の可能性、インドは大規模停電などインフラ面の未整備という問題を抱える。

 重要なポイントは、BRICs諸国の景気減速によって、世界経済の牽引役がいなくなってしまったことだ。牽引役のいない世界経済は、減速感が一段と鮮明化する懸念が高まる。

 どこの国でも、多かれ少なかれ問題を抱えている。つい最近まで、元気に成長過程を歩んできたBRICs諸国も例外ではない。