写真:連邦準備制度理事会のジェローム・パウエル議長Photo:Scott Olson/gettyimages

 米2年債利回りと連邦準備制度理事会(FRB)の主要政策金利の1つである超過準備預金金利(IOER)のスプレッドが足元、新型コロナウイルス感染拡大を背景に金融市場が大きく混乱した昨年3月以来の水準に縮小している。金融システムで緊張が高まっている兆候の可能性がある。

 2年債利回りは22日の取引を0.113%で終えた。これはIOERを0.013ポイント上回る水準だ。2年債利回りは2月に入り、0.105%まで低下している。

 FRBは昨年3月、相場急落を受けて一連の介入に踏みきり、その一環としてIOERを100ベーシスポイント(bp)引き下げ0.10%とした。短期金融市場を下支えし、経済活動の回復を促すことが目的だ。IOERと米2年債利回りのスプレッドは、FRBが3月にIOERを過去最低の水準に引き下げて以降は、往々にして0.05ポイントを上回っていた。

 市場関係者はスプレッドの縮小について、安全資産に現金を逃避させたい投資家による短期債への需要増大を反映しているとの見方を示している。また金融市場の根強い懸念も反映している。FRBの市場支援策はどの程度まで持続不可能な水準に資産価格を押し上げるのか、またそれによって債券市場などが相場急転の影響にどれほどさらされやすくなるかという疑問がある。

 こうした中、アナリストは、財政支出の拡大や米国債の供給急増が米短期債の利回りを押し上げる(価格を押し下げる)かどうか見極めるため、米国債の入札動向に注目している。現時点ではこうした現象は起きていない。だが債券トレーダーは、経済支援策や将来の借り入れコストを賄うため紙幣増刷が見込まれる中、インフレが今後加速すると予想している。