時代や環境変化の荒波を乗り越え、永続する強い会社を築くためには、どうすればいいのか? 会社を良くするのも、ダメにするのも、それは経営トップのあり方にかかっている――。
前著『戦略参謀の仕事』で経営トップへの登竜門として参謀役になることを説いた事業再生請負人が、初めて経営トップに向けて書いた骨太の経営論『経営トップの仕事』がダイヤモンド社から発売されました。好評につき発売6日で大増刷が決定! 本連載では、同書の中から抜粋して、そのエッセンスをわかりやすくお届けします。好評連載のバックナンバーはこちらからどうぞ。

なぜトヨタでは、<br />「指示は不親切なほど良い」<br />と言われるのか?Photo: Adobe Stock

「ムダをなくそう」ではなく「ムダをさがそう」

 トヨタには、日々の業務において全社員が「そこにムダはないのか」と常に考え続けている状態が脈々と企業の文化として根付いています

「ムダとわかっていて放置する奴はいない。ムダがあることに気が付いていないのだ」

 トヨタのムダ取りの指導の際に使われる言葉ですが、ここから「ムダをなくそう」ではなく「ムダをさがそう」というスローガンが使われるようになりました。

 ムダの発生の温床がわかれば、そこを「目で見る管理」を行う対象にできます。

「目で見る管理」は、要監視項目について「見える化」を行い、もしそこに問題が見つかれば、素早くアクションにつなげるため「管理」を行うという意味です。

 これによって、問題点の発見に常に注意を向け、目をつけるべき箇所が特定できれば、そこに注視し、素早い対応を行うことになります。

 これは、ものづくりから、売上をつくる話になっても同じであり、どこに課題があるのかを「見える化」して、素早い対応を行おうという考え方になります。

 製品企画においても、価値があることならば取り入れる前提のもと、それは本当に、コストと品質のバランスの取れた製品を作るために必要なことなのかどうかを検証するために「品質機能展開」という考え方も導入されました。

 この「品質機能展開」とは、その「品質」は、そもそも必要なレベルの仕様なのか、オーバースペックではないのか、そして製品の「機能」を高めるために価値のある仕様なのかを、部品一点一点についても検証し、製品の企画精度とコストのバランスを見極めていく手法です。