DXあなたの会社は、本質的なDXを行えているだろうか Photo:PIXTA

脱ハンコの推進やリモートワークの実施を通して、デジタルトランスフォーメーション(DX)をやったつもりになっていないだろうか。こうした単なるデジタル化で満足していたのでは、ますます日本企業は世界のデジタル競争に後れを取ることになる。そこで、東京理科大学経営学部経営学科飯島淳一教授に、本質的なDXを行っているかどうかを見極める方法について話を聞いた。(ダイヤモンド・セレクト編集部 林恭子)

DXとは「組成」「構造」の変化
“リトマス試験紙”でチェックを

 デジタルトランスフォーメーション(DX)といったとき、印鑑やサインの電子化といったデータのデジタル化「デジタイゼーション」や、オンライン会議の実施のようなプロセスのデジタル化「デジタライゼーション」をイメージする人は少なくない。

 しかし、経済産業省がDXの遅れによる経済損失12兆円が発生すると指摘する「2025年の崖」を前に、日本企業が取り組むべきDXの本質は、デジタル技術に基づく根本的な変革だろう。

「トランスフォーメーション(変革)とは、『組成』や『構造』の変化を指す。組成とはシステムの中の構成要素で、構造は組成間の関係を示すもの。組成と構造を、デジタルを活用して根本的に変えることが、DXである」(飯島教授)

 この組成と構造の根本的な変化を捉えるのにふさわしい方法の一つとして、飯島教授が挙げるのが、DEMO(Design and Engineering Methodology for Organization)というモデリング手法だ。DEMOは企業活動の骨格を可視化するもので、商取引や売買などのトランザクション、そのトランザクションにおける部署間の本質的な関係が見えるという。

「伝票管理をペーパーレス化するなどのリエンジニアリングをDXと呼ぶことがあるが、リエンジニアリングの前後でDEMOのモデルを作っても、何も変わらないという結果になる。これらは、実装の変化に過ぎないためだ。つまり、DEMOは組成や構造が変化したかどうか、本当にDXが実現したかどうかを見極めるのにふさわしい『DXのリトマス試験紙』といえる。

 逆にいうと、DEMOで現状の組織を描いた上で、組織の組成と構造をどう変化させるかを考えることで、DXの方向付けをすることもできる」(飯島教授)